季節はもうすぐ夏。
夏のレジャーといえばやっぱり海水浴ですよね!
早い所だと、沖縄なんかでは3月下旬には海開きのセレモニーが開かれ、ゴールデンウィークになるとビーチは多くの観光客で賑わいます。
そして、そんな海水浴シーズンになると、必ず話題に上がるのが「毒クラゲ」の話。
ニュースでもそこかしこで「毒クラゲ」に対して注意喚起する報道が流れますよね。
この「毒クラゲ」について、触って痛かったら毒がある(刺す)、痛くなかったら毒がない(刺さない)と思われがちですが、そこには思わぬ落とし穴が潜んでいます。
今回の記事では、クラゲの毒の有無についてや、海水浴でのクラゲ予防や刺された時の対処法について解説していきます!
●毒のあるクラゲと毒のないクラゲ
水族館で働いていると、来館者からよく「このクラゲは毒があるのか?」という質問を受けます。
クラゲの水槽を一つ一つ見ながら、毒の有無を紹介するんですが、「あるクラゲ」について「毒持ってますよ。」というと、ほとんどの方が「えっ!?」と驚いてしまうんですね。
そのクラゲとは、「ミズクラゲ」なんです。
↑ミズクラゲ
ミズクラゲは、海中でもよく見える白く濁った半透明な体色を持ち、春~夏にかけて大量に発生する20㎝ほどの比較的大きなクラゲです。私たちが一番よく目にするクラゲです。
そして、触ってもほとんどの人が痛みを感じないため、「痛みがない=毒がない」と思われ、刺さないクラゲの代表格として扱われることがあります。
しかし、ミズクラゲは、「刺胞」という毒針を内包した細胞を持つ「刺胞動物」の仲間であり、しっかり「毒」を持っているんですね。
他にも、毒クラゲとして有名な、アカクラゲ、アンドンクラゲ、ハブクラゲなどは、全てこの刺胞動物のクラゲです。
最近まで他のクラゲに比べて毒が弱い(あるいは量が少ない)からと言われていましたが、
最近の研究では毒の強さが弱い訳ではなく、刺胞内の毒針の長さが短いため、痛みを感じる部位まで刺さらないからではないかと言われています。
今まで、ミズクラゲを触って痛みが出たという話はほとんど聞いたことがありませんが、目など皮膚の薄い場所なら痛みが出る可能性もあるかもしれません。
クラゲを触った手に肉眼で見えない毒針がびっしりと刺さるのは確かなので、
やはりクラゲはむやみに触らない方が良いですよ!
例えば、カブトクラゲ、ウリクラゲなど「有櫛動物」と呼ばれるグループのクラゲです。
このグループのクラゲ達は、長く伸びる「触手」がなかったり、刺胞動物のクラゲより体が薄く柔らかく、すぐに破れてしまうといった特徴があります。
↑カブトクラゲ
●クラゲに刺されないためには?もし刺されてしまったら?
クラゲに刺されるとピリッと電気が走ったような痛みを感じ、刺された場所が虫刺されやミミズ腫れの様に赤く膨れます。
その後、しばらくは痛みや痒みが続いたり、水膨れが出来て跡が残ったりと苦しめられることになります。
また、毒の症状はクラゲの種類(毒の強さ)やその人の体質によっては重症化することもあり、滅多にないことですが最悪の場合ショック症状で死に至ることもあります。
日本でみるクラゲでも、ハブクラゲやカツオノエボシといったクラゲで死亡例があるんですよ。
↑クラゲに刺された跡(腕のミミズ腫れ)
クラゲに刺される心配があると折角の海水浴もおちおち楽しんでられませんよね?
そうならないように、クラゲ対策法を5つご紹介します!
肌を露出させない
一番効果があるのは、ズバリ肌の露出を減らすことです。
服の上からクラゲに触っても毒針が発射されないか肌まで届かないため、刺されることはありません。最近はラッシュガードと呼ばれる水着生地の長袖やレギンスがあるため、海で泳ぐ際はグローブやマリンブーツと合わせてしっかりと着用しましょう。
紫外線対策にもなるので、一石二鳥ですよ!
ただし、服の表面に刺胞がついてしまい、服の表面に素肌が触れるとピリピリすることがあります。
クラゲがいる場所で泳いだ後は、服をしっかり真水で流しましょう。
また、フードを被れば頭は守れますが、顔の一部はどうしても露出してしまうため、顔にだけは当たらないように注意しましょう。
クラゲの多い場所や時期を避ける
クラゲは遊泳力が低く流れの弱い場所に集まりやすいため、奥まった湾の様になっている場所や波のない静かな海岸に多くいる傾向があります。
一見すると遊びやすそうな環境ですが、「クラゲに注意!」などとうたっていたり、悪い口コミがあったりする場所は避けた方が無難です。
また、水温が高くなる7月後半~9月にかけて、四角い体に長い触手が特徴のアンドンクラゲが大量発生します。気づいたら囲まれていて全身刺されるなんてこともありますので、夏後半は出来る限り避けたほうが良いでしょう!
上記の様に予防しても、100%防げることはなく、顔やめくれた服の隙間から刺されてしまうこともあります。
次は、もしもクラゲに刺されてしまった時の対処法について紹介します。
すぐに海から上がる。
刺されたあとに急に体調を崩してしまったり、パニックになったりして溺れてしまうことが一番避けなければいけないことです。
痛みや異変を感じたら、まずは落ち着いて海から上がることを優先しましょう。
刺されたところを触らずに、海水でよく流す。
痛みがあると、気になって患部を触ってしまいがちですが、刺されたところには目に見えないほど小さいまだ毒針の残った刺胞がたくさん付いています。そこを触ってしまうと、その刺激で毒針が発射してより刺される範囲が広がってしまうため、触らずに海水でよく流しましょう。触手が残っている場合は、ピンセットなどの摘まめるもので慎重に剝がしてください。また、洗う際に真水で洗ってしまうと、浸透圧で刺胞が刺激を受けたり、毒が回りやすくなるため、必ず海水で流しましょう。
症状が酷ければ病院へ、軽ければ市販薬(抗ステロイド軟膏)で処置
刺された際に激痛がしたり、全身症状(頭痛、倦怠感、呼吸困難など)が現れる場合には、すぐに救急車を呼ぶか病院へ行きましょう。
痛みや症状が軽ければ、ステロイド系の軟膏が症状に効きます。
年齢や症状、刺された部位によっても使用できる薬剤は変わるため、薬剤師さんに相談して購入してくださいね。
●まとめ
・「触っても痛くない=毒がない」ではなく、刺胞動物のクラゲは有毒、有櫛動物のクラゲは無毒。
・クラゲに刺されないためには、肌の露出をなくし、クラゲの少ない場所・時期を選ぶ。
・クラゲに刺されたら、まず海から上がり患部を触らず海水でよく洗う。症状により、病院へ行くか市販のステロイド軟膏で処置。
「美しい花にはトゲがある」と言いますが、美しいクラゲの多くにも毒があります。
刺されると不快な思いをしたり、時には生命の危機にさらされることもあります。
しかし、刺されないための予防をすることで大部分を被害は防ぐことが出来るため、必要以上に怖がることはありません。
また、刺された時の正しい対処法を知っていることで、自分や家族のいざという時に慌てずに対応することができます。
この記事を参考に、夏の海水浴を心置きなく楽しんでくださいね!
コメント