海老の匂いについて

アメリカザリガニ とと

早速ですが皆さんは「美味しい食事の香り」と言われてどのような香りをイメージされるでしょうか。

牛肉が鉄板でジュウジュウ焼ける香り、炭火でじっくりと油を落としながら焼き上げる鰻の香り、庭先で七輪を使って焼き上げるサンマの香ばしい香り、一晩コトコトと煮詰めた濃厚なカレーの香りなど、美味しい食事には必ず「香り」の存在がいます。

ではこの香りがなければどうでしょうか。風邪をひいて鼻が詰まった時のご飯は味気がしないと思います。

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一番わかりやすいのは鼻をつまんで焼き肉を食べてみてください。あんなに美味しい焼き肉が、鼻をつまむだけでほとんどの人は味が分からなくなると思います。それくらい嗅覚は味覚と連動しており、匂いは味に直結する要素でもあります。

それでは「海老の匂い」と言われてどのようなイメージが湧くでしょうか。

多くの人は「生臭い」「独特な臭い」などネガティブな匂いを連想することでしょう。そしてこの臭いが原因で海老が苦手な人もいるくらいです。

かくいう私自身もその一人でした。今回は日本で多く食されているにもかかわらず「臭い」と言われてしまう海老の匂いについて深掘りをしていきましょう。

ザリガニはなぜ臭い?甲殻類の臭いについて

皆さんはザリガニ釣りをしたことはありますか?もしくは家でザリガニを飼っていた経験はありますか?

最近はザリガニが獲れる場所も減ってきていますが私が子供のころは家の近くの用水路にザリガニがたくさん生息しており、よくザリガニを家へ持って帰ったものです。

そうして家の水槽にいれて飼育をするのですが、水槽が非常に独特な臭いを放ち始めます。最初は水が原因かと思いこまめに掃除をするのですがなかなか取れません。

当時は「そういうものだ」と諦めていましたが、いったいどうして臭いのでしょうか。

臭いの原因はアンモニア

その答えは大人になって水産関係の仕事に携わるようになって初めて解明しました。

なんと甲殻類は窒素分をアンモニアに変えて排出しているのです。

アンモニアは非常に臭いのきつい物質で、人によっては学校の理科の実験で「直接はダメ。手で仰ぎながら嗅いでください。」と言われて経験したことがあるかもしれません(今はもっと衛生的によい方法があるのかもしれませんが)。

それくらい臭い物質であるアンモニアを生成しているため、ザリガニの臭いはきついのです。

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そして種類によって違いはあるものの、甲殻類は一般的にアンモニアを生成しており、海老もその中に含まれます。海老が臭いと言われる一つ目の原因です。

【水底を歩くアメリカザリガニ】

あれ、台所が臭う?隠れ海老の殻に要注意

海老の臭いの原因が分かり安心したそこのあなた。実は海老の臭いの原因はこれだけではありません。

アンモニアは主に生きているときに生成されており、水揚げ後や料理をする際には強く影響しません。実は二つ目の原因が隠れているのです。

海老を調理される方には経験があるかと思いますが、海老料理を作ってから数日後、排水溝のネットや生ごみが非常にきつい異臭を感じたことはありませんか。

経験がしてみたい、という挑戦精神旺盛な方がいらっしゃるなら、スーパーで殻付きの海老を買ってきて一日常温で放置してみるとよくわかるかと思います(私は全くお勧めいたしませんが)。

あの強烈な臭い、check原因はトリメチルアミンと呼ばれる物質で、旨味成分の一つであるトリメチルアミンオキサイドという物質が時間経過とともに分解されて出来上がります。

つまり放置すればするほど臭みが強くなり、非常に強烈な異臭を放つのです。

これは魚介類全般にも同様のことが言え、魚特有の生臭さの原因でもあります。魚介類を調理した際には後片付けをくれぐれもご注意ください。

海老の臭いはこれだけじゃない?「カビ臭」の脅威

生きているときのアンモニア臭や時間経過とともに発生する生臭さとはべつにもう一つ海老の独特な臭いがあります。

ご存じの方はあまり多くないかと思いますが、海老通の方は経験されたことあるかもしれません。それが「カビ臭」です。

カビ臭と聞くと海老が腐敗してカビがはえているイメージをされた方が多くいらっしゃると思います。

check名前はカビ臭といいますが、原因はカビではありません。

ジオスミンとよばれる有機物質であり、主に藍藻等の微生物によって生成され、微生物と一緒に海老が食べることで海老の身自体がカビのような臭いになる現象です。この微生物は池などの淡水に多く生息しており、現在の養殖池にも存在する可能性があります。

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そこでカビ臭を抑えるのに適した養殖方法に海水養殖というものがあります。淡水の代わりに海水を使って海老を養殖することで、養殖池に微生物の発生を抑え、カビ臭の原因であるジオスミンの発生を元から締め出すことが可能です。

一昔前まではこのカビ臭は当たり前のように発生していましたが、最近減ってきたのは養殖技術の進歩が影響しているのかもしれません。

料理人の知恵!海老の生臭さを取る方法

これまで海老の臭いの原因について説明してきました。こんなにも臭いがある海老を人はどうして食べているのでしょうか。

それは適切な処理をして臭いを抑えることで海老本来がもつ旨味を堪能しているからです。

様々な臭いの原因を持つ海老ですが、その中でも生臭さの元であるトリメチルアミンを抑えることは古くから日本では当たり前に行われています。

例えば片栗粉と一緒に料理酒に漬けて臭いを消す下処理があります。これはアルコールがもつ「共沸効果」を活用しています。

これはアルコールが蒸発する際に他の臭い成分も一緒に揮発させる効果であり、みりんも同等の効果を有しています。

またお酢に漬け込み臭いを消す方法も有名です。checkトリメチルアミンはアルカリ性の物質であり、そこに酸性であるお酢を混ぜることで中和を起こし臭いを減少させます。レモン汁も同様の効果を発揮します。

また別の方法では牛乳に漬け込むといったものも存在します。

このように海老の臭いを取る方法はいろいろあり、そこには人々の知恵と海老を美味しく食べたいという想いがたくさん詰まっているのを感じますね。

海老の臭いについてまとめ

いかがでしたでしょうか。

日々食べている海老ですが裏では多くの臭いがあり、それを取り除くことで美味しい海老を食べることができています。

次海老を食べる機会には是非とも海老の香りを感じてみてください。嫌な臭みがなければそれは養殖業者・加工業者・料理人の皆さんが努力して作り出した旨味の結晶です。

そして海老本来が持つ旨味とその中にある食欲をそそる磯の香を思う存分堪能していただければと思います。

皆さんの食卓に少しでも貢献できれば幸甚です。

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