「生き残る方が難しい!?意外とハードなウミガメの一生」

ウミガメの一生 とと

「亀は万年」ということわざがある通り、カメの仲間は動物の中でも長い寿命を持つことで知られています。

そしてウミガメはカメの仲間の中でも、100~200年生きるといわれているゾウガメの次に長い寿命を持つと考えられており、60年以上生きた個体も確認されています。

この話だけを聞くと、「長寿ということは滅多に死ぬこともないのでは?」と思うかもしれませんが、実際は生まれたうちのごく少数しか生き残ることが出来ません。

さらに、ウミガメの一部の種類は年々生息数が減っており、その一因として私たち人の影響があります。

今回の記事では、ウミガメのハードな一生と、私たちがウミガメに与える影響についてお話したいと思います。

ウミガメの繁殖について

ウミガメが成熟する、つまり子孫が残せるようになるまでどの位の時間がかかるかというと、例えばアカウミガメでは約20~30年程度かかると考えられています。

成熟までハツカネズミで約1か月、牛で約1年かかると考えると、ウミガメは動物の中でも特に成熟するまで時間がかかるということが分かりますよね。

ただし、ネズミの寿命が2~3年であるのに対し、アカウミガメでは推定約60年と長い寿命を持っています。check寿命がとても長いということが成熟の遅い理由なんですね。

ウミガメは小さなときは見た目で雄雌の区別がつきませんが、大体甲羅の長さが80㎝を超えるころには、オスだけ尾の長さが伸びていきます

つまり、上から見て甲羅に隠れるほど尾が短ければメス、はっきり分かるほど尾が太く長ければオスということです。

ウミガメは海でオスとメスが出会い交尾を行うのですが、広い海でどうやって相手を探すのかということについてはまだ分かっていません。

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しかし、メスは体内でオスの精子を約100日間もの間長期保存できるため、出会いが少なくても大丈夫という訳なんですね。

↑ウミガメの産卵

無事にオスと出会えたメスは、産卵のために砂浜に上がります。そして、波の届かない海辺から少し離れた場所に大きな穴を掘り、ピンポン玉のような卵を一度に100個ほど産み落とし、砂を被せて卵を隠します。

check産卵は2~4年おき、1年につき2~4回のペースで行われます。

卵は2か月ほどでふ化しますが、不思議なことに卵の時の周囲の温度で生まれる子ガメの性別が決まってしまうのです!

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アオウミガメの場合だと、温度が29。5℃以上ならメス、それ以下ならオスとなります。そのため、産卵した年が例年より暑いと、生まれた子ガメもメスばかりになるということが起こります。

近年、地球温暖化が問題になっていますが、このまま気温が上がり続けるとメスばかりになって繁殖が出来ず、ウミガメが激減してしまうことにもなりかねないのですね。

ふ化してから苦難の連続!死と隣り合わせのウミガメの一生

卵は天敵の少ない深夜にふ化し、子ガメたちは砂から這い出て海へ移動します。

真っ暗闇でもまっすぐに海へ向かうことが出来るのですが、それにはcheck子ガメに光に向かっていくという習性があり、海が放つ光(紫外線)を感知して向かっているからと言われています。

注意

しかし近年、海岸に立つ電灯の強い光に引き寄せられてしまい、海にたどり着けず死んでしまうということが起こっています。

そうでなくとも、砂から出られなかったり、アリなどの虫や鳥、野生動物に捕食されたりと、海に出るまでにも多くの子ガメが死に至ります。

生まれた瞬間から襲い来る試練を乗り越え、無事に海に出た子ガメは2日間飲まず食わずでひたすら泳ぎ続けます。

この行動をフレンジーと言いますが、なぜこのような行動をするのかというと、いち早く沖合の海に出て生存率をあげようという作戦なんですね。

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浅い沿岸の海は栄養豊富で食べ物もたくさんありますが、裏を返せば魚や海鳥など捕食者が数多く存在するということになります。対して、沖合は食べ物が少ない分天敵も少なくなるため、被食率は少なくなり、生存率が上がるというわけなんですね。

子ガメたちが成長して、他の生物から容易に食べられないほどの大きさになると、今度はエサの豊富な沿岸へ戻ってきます。

特にエサが海草(海藻)などの植物性の強いアオウミガメは、肉食性のアカウミガメに比べ、海草の生育に必要な太陽光の届くより浅い場所を住処とします。

エサの豊富な環境で、繁殖できるようになるまでの十数年を過ごしていく訳ですが、途中でケガや病気で死んでいくものも多く存在します。

また、沿岸つまり私たちの生活圏に戻ることで出てくる問題が、廃棄プラスチックの誤食や、漁業の網などに絡まってしまうという問題です。

まず廃棄プラスチックの誤食については、ビニール袋などがウミガメのエサであるクラゲによく似ているため、誤って食べたことで体調を崩し死んでしまうことがあります。

死んだウミガメの胃袋に大量のビニールが詰まっていたという話も、実際によくある出来事なんです。

また、魚を捕るための定置網や刺し網にウミガメが誤って絡まってしまい、呼吸のために水面へ上がれなくなり死ぬこともあります(ウミガメは肺呼吸のため、ずっと水中に潜り続けることはできません)。

現在、ウミガメの引っかからないような網目の大きさや素材を探したり、定置網に脱出口を付けるなど、混獲を減らすための研究開発は行われています。しかし、対策費用がかかることや、どう対策を普及させていくのかなど課題は多く、さほど運用されていないのが現状です。

このような様々な苦難を乗り越え、成熟するまで生きられるウミガメの数はおよそ0.02%以下、つまり10000匹のうち2匹程度しか生き残れないほど、彼らは厳しい世界で生きているのです。

まとめ

・ウミガメは動物の中でも特に晩熟で、繁殖可能になるまで20~30年もの年月がかかる。

・性別は卵の時の温度で決まり、29.5℃以上だとメス、それ以下だとオスになる。

・被食やケガ・病気、人(人工物)の影響などによる死亡は多く、成熟するまでの生存率は推定0.02%である。

ウミガメといえば、のんびりゆったりしており平和なイメージがありますが、実際は生き残る確率の低いハードな一生を送っているんですね。

point

また、そのウミガメの死亡の原因として、海岸開発や混獲、海洋ゴミや温暖化など、私たち人間が深く関わっているという悲しい事実があります。

近年、買い物時のビニール袋が有料になり、手間や不便さを感じたこともあるのではないでしょうか?

そんな時に、「ビニールごみが1枚減れば、ウミガメが1匹助かるかもしれない。」と思うと、前向きになれるかもしれません。

身の回りのエコ活動がウミガメの共存へと繋がっていく、そんなことを意識してみてはいかがでしょうか。

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