イカとタコを見分けることができますか?

イカとタコ とと

早速ですが、皆さんはイカとタコを見分けることができますか?「なにを当たり前のことを言っているんだ?」と思われた方がほとんどだと思います。

なにせ一番大きな違いがありますよね。そうです、足の数です。タコは8本でイカは10本と知っている方は数多くいらっしゃると思います。

しかし違いはそれだけでしょうか。屁理屈にはなりますが、イカの足が2本とれてしまったらそれはタコになるのでしょうか。そんなことはないですよね。

イカとタコは非常に近い形態をしていますが、実は数多くの違いが存在しています。例えば吸盤での引っ付き方はどうでしょう。釣りをされている方は経験があるかもしれませんが、イカやタコが手に巻き付くとイカとタコで感覚が違ってきます。

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タコは読んで字のごとく吸い付いてくる吸盤構造なので、吸盤部分に触れている皮膚が吸われています。しかしイカの吸盤にはキチン質の角質環があり、噛みつかれているような感覚に襲われます。

実際に吸われた後をみてみても、タコだと丸い痕がついているのですが、イカだと噛まれたような痕が残っています。私も初めてイカ釣りをしたときに手に巻きついたイカから電気のような衝撃が走り、非常に痛かったのを覚えています(もちろんタコの吸盤も強く吸われて痛いですが)。

このように敵を捕らえるという同じ機能である吸盤でも構造はイカとタコで異なっています。今回はこのようなイカとタコの違いに着目し一緒に知識を深めていきましょう。

イカとタコの構造と生態とは?

以前の記事でイカは軟体動物門の頭足綱に属するとお伝えはしましたが、タコも同じ頭足綱に属しています。そのためイカもタコも体の構成は胴-頭-足の順であり、非常に似通っています。

カラストンビ

このことからもイカとタコは非常に近い仲間と言えます。さらに胴体(タコやイカのイラストでは帽子みたいにみえるところ)に内蔵が納まっており、吸盤のついたいくつもの腕がありますし、腕の根元にはカラストンビと呼ばれる口と頭があります。

余談ではありますが、釧路にあるタコの加工工場を視察した際に現場のスタッフの方々が「トンビをきれいにとりぃ」と若手スタッフへ指導されていることがありました。当時は「鳥のトンビ?」といぶかしく思ったものです。

この「トンビ」という名称はさまざまなところで根付いており、沼津漁港近くの居酒屋で「タコトンビ唐揚げ」があった時はびっくりしました。

ちなみに「トンビ」という名前の所以をスタッフへお伺いしたところ「口にある歯の形が鳥のトンビのくちばしに似ているから(諸説あり)」とのことでしたので意外と鳥のトンビとの関連性もあったようです。

このように姿かたちや口の構造など、一見すると似ているようでもイカとタコその生態は違っています。

体色の変化

例えばイカもタコも瞬間的に体色を変化させることができますが、どのようなときに変化させるかご存じでしょうか?

実は同じ体色変化でも発生する原理は大きく異なっています。

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イカは興奮した時に体色変化をおこし、例えば急いで逃げるときなどに体色が変化します。対してタコは保護色として敵から身を隠すときに体色を変化させます。

同じ体色変化ではありますが、イカは敵への威嚇行動に、タコは敵から身を隠す潜伏行動に使用する当たりは似ているようで大きな違いがあります。

保護色という意味ではもう一つ面白い機能をタコは有しています。それは岩場など潜む際に体の表面を突起させて岩に見せかけることができます。

対してイカにはこのような表面の変化はすることはできません。こうみるとタコは本当に隠れ名人ですよね。

さらにタコにはイカにはもっていない体の構造があります。ヒントは人間や多くの哺乳類がもっている構造です。どちらかと陸上で生活している生き物が多くもっているかもしれません。何だかわかりましたか?

答えは「瞼(まぶた)」です。結構意外ですよね。対照的にイカは瞼を有してはいません。この違いにも諸説はあるかと思いますが、砂場に隠れるときに砂から目を守っている、と思うと少しかわいいですよね。

また泳ぎ方にもイカとタコには違いがあります。両者とも推進力は漏斗官から水を吹き出して後方に泳ぎますが、イカは体側にあるヒレを動かして停止したり、逆に前方向に泳ぐことが出来ます。

自在に動く方向を決められるイカは逃げに特化したのかもしれませんね。


<釣り上げられたタコ:体色変化をつかって岩肌へ擬態>

<海を泳ぐイカ:ヒレを使って自在に移動>

イカとタコの足の違いは?

イカとタコの足の違いといえば8本と10本といった本数がイメージしやすいですが、上記で記載した通り吸盤の形が異なっています。

イカの場合、それぞれの足に4列の吸盤があり、5対の内1対の2本は触腕で捕食時に機能します。人間の手のように器用に使い分けていますね。

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さらに吸盤の一部分は角質化しておりいくつかの先端はノコギリ型に尖り、捕らえた獲物を逃さない仕組みになっております。まるで無数の口に噛まれているとイメージするとわかりやすいかもしれません。

対してタコの力強い筋肉質でできており、いぼ状の吸盤は吸い付きやすくできています。またタコの吸盤はオスとメスで少し違う配列形状をしているのが特徴的です。

メスの吸盤は形の近い吸盤が列をなしてきれいな配置をしているのに対して、オスは大小様々なサイズの吸盤が乱立しています。checkまたオスには先端に吸盤のない足が一本だけあり、生殖器としての機能を有しています。

イカとタコの墨の違いについて-

イカやタコは、生きるために敵に対する防御態勢として墨汁を持っているのはご存じですよね。

タコは肛門のところに墨汁嚢の口が開いて、いざという時に命令によって括約筋が開いて墨汁が漏斗から相手に吹きつける仕掛けになっています。

イカも同様の機能が肝臓の腹面にあって、出口は漏斗に開口しています。括約筋の意志的活動によって噴出されるようになっているのです。

噴出されたイカやタコの墨汁は主に「セピオメラニン」と呼ばれるメラニンの一種です。

イカの墨汁にはこの「セピオメラニン」がマグネシウムやカリウムがついた塩類化合物となっていて、粘りけがあり海中ではすぐに霧散することなく塊状になります。

この利点は噴出した墨汁がイカの姿に見えるところから、外敵に襲われたときのダミー効果になると言われています。

またタコの墨汁の成分は「セピオメラニン」でアミノ酸の一種のチロシンが酸化酵素によってできたもので、墨汁の中に天敵を麻痺させる特殊な成分が含まれています。敵に襲われると天敵に向けて墨汁を吐き、煙幕状にして逃避します。

両者とも墨汁の補充は30分もすれば墨汁嚢の中は満タンになるようです。おなじ墨汁でも、イカは身代わりの術、タコは隠れ身の術というように少しばかり使い方が異なるようですね。

イカとタコのエサの違いについて

イカは遊泳性で一定の棲み家を持たず、外洋にも出ていきます。そのためエサは泳ぎながらプランクトンやイワシやトビウオなどの小魚も襲い捕食します。

対してタコは定住性で比較的浅い岩場を好み、肉食性で甲殻類、小魚、二枚貝類を食べています。これらも生活環境に適した食事スタイルになっているわけですね。

いかがでしたでしょうか。おなじ頭足綱のイカとタコですが、生態や墨の使い方、エサなど多くの点で違っています。

スーパーなどでイカやタコを見たときにただ並んでいる食材ではなく、生きるために様々なことを考えた知恵者としてみると面白いかもしれませんね。

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