突き出たコブにしゃくれた立派なアゴが特徴的なコブダイ。名前にタイとついていますが、タイではなくベラの仲間です。
印象的な顔を持つことから水族館でも展示しがいのある魚なので、水族館では癒し系の人気者です。
今回はそんな愛くるしいコブダイの飼育エピソードも混ぜながら、お話していきたいと思います。
コブダイの生態
ベラ科の中でも最大級
コブダイは潮通しの良い外洋に面した海藻の茂る岩礁や、サンゴ礁の深場に生息しています。
日本では新潟以南の日本海や瀬戸内海などで多く見られます。体長は60㎝~1mほどになり、checkベラ科の中では最大級の大きさです。
成魚と幼魚では色や形がかなり異なります。成魚は全身がくすんだ赤紫色をしていますが、幼魚はオレンジ色の体色で体側中央部には白色の帯が走っています。また背びれと臀びれは黒くもちろんコブもアゴもでていません。
成長するにつれて色が赤紫に変化し、頭のコブとアゴが出てくるのです。
コブダイの好物
コブダイの口の中には鋭い歯が生えており、その歯と強い顎の力を使って巻貝、二枚貝、甲殻類さらにはウニまでも好んでバリバリとかみ砕いて食べてしまいます。
長年飼育されたコブダイは水族館のエサにもすっかり慣れてしまい、切り身になったイカ、魚肉、アサリ、エビなど何でも食べてしまいます。
食欲旺盛で他の魚のエサまでも奪って食べてしまうので、コブダイと同じ水槽にいる他の魚のエサの与え方や順番も重要となってくるのです。
単独行動派のオスのコブダイ
オスのコブダイは浅い水深から深い水深まで幅広く縄張りをもち、縄張りに入った他のオスを追い出そうとします。
その時の争い方はかなりユニークで、オス同士が向かい合いお互いに口を大きく開けて威嚇します。立派なコブを持ち、大きく口を開けて威嚇できた方が見事勝利となります。
お互いに傷つけ合うことはしないので平和的ではありますが、メスとの繁殖の場として作った縄張りをかけて戦いますので、コブダイにとっては命がけです。
水族館で立派なコブを持つオスのコブダイを一つの水槽に一緒に入れることはありません。一緒にするともれなくケンカになりますし、負けた方は餌すら食べてくれなくなります。
正しくは勝った方のオスが追い払い続けますので、負けた方は餌にありつけなくなるのです。
性転換する魚
checkコブダイは生まれてから50㎝ほどまではメスであり、徐々にコブが出てきてオスへと変化する雌性先熟の魚です。
体が大きくなるほど頭のコブが大きく突き出し、立派なオスの象徴となるのです。
オス1匹に対して数匹のメスを集めてハーレムを作ります。春の産卵期には水面に向かい円を描くようにオスがメスを追いかけ、腹を合わせるようにして放精、放卵をします。
幼魚の色や形が違うのは縄張り意識の強いコブダイが、幼魚をすぐに見分けることにより威嚇や攻撃をしないようにしていると考えられています。
コブダイと人とのかかわり
コブダイの呼び名
かつてはコブダイのオスをコブダイ、メスをカンダイと呼び別種に分類していました。
その名残からか、地方の市場などでは冬に旬を迎える魚という意味も含めて「カンダイ(寒鯛)」と呼ぶところがあるようです。
コブダイは釣りでも人気
磯や船釣りでも人気のコブダイは、竿を折ったり仕掛けを壊したりする怪魚とされています。
シーズンの冬から春にかけてはオスとメスがつがいで行動することが多いことから、同じポイントで同時にオスメスが釣れることもあるようです。
コブダイを食す
コブダイは特に日本海側で食用として利用されています。
白身の魚で身はやわらかく、冬であれば鮮度が維持しやすく磯臭さも抜け、何より脂がのっているため刺身で食べると美味しいです。
逆に磯臭さの残る夏は三枚におろした後に、みそ漬けにして焼いて食べるといいですよ。
水族館でのコブダイ
私の個人的なコブダイの印象ですが、飼育している魚の中でコブダイは人間になれやすい魚だと思います。
はじめは警戒心も強く物陰に隠れたりしますが、長く飼育していると飼育員の姿を見ると餌の時間だと思うのか、大興奮で水槽の水面付近をバシャバシャと激しく泳ぎ回ります。
また、あの立派なコブに触らせてくれる時もあります。コブは見た目に反してとてもプニプニしていて柔らかいです。コブは脂肪の塊ですので大きなコブほど大きく動くと少しコブが揺れます。
いつも口を半開きにしているので、なんとも愛らしい表情の写真も撮ることができますよ。
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