食べておいしい、観て楽しい イワシの話

イワシ とと

イワシと言えば、マイワシ・カタクチイワシ・ウルメイワシの3種がよく知られ、食卓にも並ぶことが多い種類です。

特にマイワシやカタクチイワシは、水族館でも大きな群れで展示されているところを目にします。

今回は水族館で飼育員をしている私が飼育員目線ならではの、体は小さくても食べておいしい、観て楽しいイワシの紹介をしたいと思います。

イワシの生態

イワシの群れ

水族館でイワシの水槽を覗いてみると、何千何万匹というイワシが大きなひと塊の群れをつくり、グルグルと泳いでいる様子を見ることができます。

イワシは群れを作って身を守る習性があります。

群れを作るメリットは、

・単独行動よりも、群れでいる方が自分の襲われる可能性が低くなる。

・敵から狙いを定めにくくする。

・襲ってきても一気に散らばることで目くらましになる。

・繁殖において、他種に比べ雌雄の遭遇率、受精率がかなり高い。

などが考えられています。

逆にデメリットもあります。

・目立つので、敵にすぐに見つかる。

・複数の敵に囲まれ、一網打尽にされる。

ちなみに水族館の大きな水槽にイワシを展示し、グルグルと一か所に固まって泳いでいる様子を目にしますが、その理由としては

・その水槽のその場所に岩などの障害物がない。

・群れの外側より内側の方が敵に襲われる確率が低いので、外から内側に入ろうとすればするほどグルグル回り、群れの形が円や球体になっていく。

などが考えられます。

よくこのイワシたちが回る方向(時計回りか反時計回り)は決まっているのか尋ねられます。

まだはっきりとはわかっていませんが、水の渦巻く方向が北半球と南半球で違うように、イワシの群れの泳ぐ方向も北半球と南半球で違うという事を聞いたことがあります。(所説あり)

イワシの食生活

イワシが餌として食べているのは主に小さなプランクトンです。

鰓に鰓耙(さいは)と呼ばれる棘のようなものがあり、そこでプランクトンを濾しとって食べています。

口から海水ごとプランクトンを取り込み、鰓から海水が出ていきプランクトンは鰓耙に濾されて飲み込んでいくのです。

イワシは口を大きく開けたまま泳ぐことで、海中を漂うプランクトンを食べているので、プラントンを捕まえて食べるという感覚ではないようです。

ちなみに水族館では、大量に生きたプランクトンを用意することができないので、冷凍のプランクトンや砂粒上の金魚の餌のような人口餌を与えたりしています。

体は小さいですが常に泳いでいるので、消費エネルギーが大きいためかなりの餌を食べます。

冷凍プランクトンや人口餌はまあまあ高いので、イワシは餌代が掛かる魚でもあります。

イワシの種類

冒頭でも紹介したイワシとしてよく知られている3種類、マイワシ・カタクチイワシ・ウルメイワシ。漁業的にイワシというのはこの3種類を指すことが多いようです。

ちなみに鰯という漢字は、魚に弱いと書きます。それは、check水揚げされたらすぐに鱗が剥がれ弱ってしまうから。

また、大きな魚に獲物として狙われやすいほど弱いからなどがその由来のようです。

マイワシ

体側に7つ前後の黒の斑点があり、そこから東北の方では方言で「ななつぼし」とも呼ばれています。

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鮮魚を選ぶ際に、このななつぼし模様がはっきりしているものほど、鮮度がいいとされています。

青魚の代表種であり、アミノ酸、たんぱく質、脂肪酸(DHA、EPAなど)等が多く深まれています。

骨を強くしたり、脳細胞の働きを良くしたり、血液をサラサラにして血液の性状を保つスーパー健康食品として有名です。

check缶詰めになると、生で食べるよりもEPAやイワシペプチドなどが豊富に含まれるとか。

水族館で展示されていることが多い魚で、鱗に照明が当たりキラキラと煌めく様子が綺麗と人気のようです。

カタクチイワシ

下あごが上あごよりも短く、口は吻の下面に開くことが特徴です。また片方に口が開いているように見えるという様子が名前の由来となっています。

マイワシよりも沿岸で見られることも多く、季節によっては防波堤にいる多くの釣り客が、カタクチイワシを狙う大型魚を狙っていることもあるぐらいです。

稚魚はシラスと呼ばれ、生や天日干し、釜揚げなど親しみも多くあります。成魚では煮干しやいりこで出汁をとるときにも使われます。

水族館では展示しているところもありますが、安く手に入るため水族館によっては、大型魚の餌としても使っているところがあるようです。

ウルメイワシ

大きく透明な膜で広く覆われた眼が潤んだように見えることから、その名前が付きました。全長は30㎝ほどですが、大きさによって利用方法が違うようです。

大型のものは刺身や塩焼きに、中型のものは干し物として利用されています。

水族館ではあまり展示されていません。理由はいくつか考えられています。

・ほかのイワシに比べまとまった数が採れない。

・ほかのイワシに比べて弱い。長生きしない。

そもそも私も生きた姿は数回しか見たことがありませんし、漁獲された他のイワシに紛れていて数も数匹でした。いつか生きた姿で、しかも大きな群れで見てみたいものです。

イワシなのにイワシじゃない?

私たちがイワシの仲間としているのはニシン目に分類されるものです。上記で紹介した3種の他に、オグロイワシ・カタボシイワシ・シオサイイワシなどが含まれます。

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しかし名前にイワシと付きながら、実はイワシではない種類が海には多く存在します。

例えば水族館でも稀に見られるソトイワシやカライワシ、イワシに見た目が似ているトウゴロウイワシの仲間。

深海にすむハダカイワシの仲間や最近新種が発見されたセキトリイワシの仲間など、単にイワシと付く魚だけでもかなりの種類が存在するのです。

名前に惑わされず、イワシかイワシじゃないかを見極めるのも面白いかもしれませんね。

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