甲殻類の王様「かに」の話

松葉ガニ とと

タラバガニの特徴

タラバガニを見て、「普通のカニよりも脚が少ない」と感じたことがある方もいるはずです。

通常のカニ類(ケガニ、ズワイガニなど)は歩脚を4対持っています。

そして、タラバガニ類(アブラガニ、ハナサキガニ、タラバガニなど)も歩脚を4対持ってはいます。

ですが、タラバガニ類は4番目の脚が非常に小さく甲羅の下にあります。そのため、一見すると3対しか脚がないように感じるのです。

それ以外にも通常のカニ類と異なることがあります。

甲羅をひっくり返してみると、オスの腹部が右方向にねじれていることが分かります。

通常のカニ類は当然左右の偏りはありません。

そのため、タラバガニ類は「異尾(いび)類」に分類されます。また、「ヤドカリ類」にカテゴライズすることもできます。

ちなみに一般的なカニ類は「短尾(たんび)類」に分類されます。

また、タラバガニの甲羅は横に長い四角形であり、少し丸みがあります。

額部分は突き出ています。甲殻面にはハッキリとしたトゲが多数ついています。

ハサミについては、右側のほうが大きく強いです(オス・メスで同様)。

生きている状態では背面が紫色となっていますが、熱を加えると朱色になります。

さて、タラバガニ科の生物の中でも、タラバガニは水産上一番重要度の高い生物とされています。英語圏では「キングクラブ」と呼ぶくらいです。

北海道東部太平洋岸、日本海南西部~オホーツク海、アラスカ沿岸の北極海~カナダ沿岸、ベーリング海などに生息しています。

水深30~360メートルあたりのところで暮らしています。

甲長は22センチですが、歩脚を横方向に広げると150センチほどとなります。

体重は最終的に11キロほどとなります。

ですが、通常は甲長が19センチ以下のものを漁獲しますので、11キロほどのカニを獲ることはあまりないと言えます。

4~6月頃が産卵期。

30年以上生きます。

漁獲方法のメインは刺し網であり、日本では北海道の周辺で盛んに漁獲されています。

また、ロシアから多くのタラバガニが輸入されています。

タラバガニの美味しい食べ方

タラバガニの旬は冬です。

生きた状態のタラバガニも、茹でてから冷凍したタラバガニも出回っています。

また、脚だけのものや、丸ごとのものも一般的に販売されています。

茹でたタラバガニや、生きた状態のタラバガニはそのまま食べるのが美味しいです。

また、スープの具材、酢の物、サラダの具材、天ぷらなどのメニューも人気です。

ちなみに、もともと「カニ缶」の中身としてはタラバガニが普通でした。

アブラガニの特徴

タラバガニ科に分類されます。

タラバガニに似ていますが、アブラガニは青紫色っぽいため区別できます。また、その色合いから「アオガニ」と呼ばれる場合もあります。

また、主にアラスカでは「タラバガニ→レッドキングクラブ」「アブラガニ→ブルーキングクラブ」と呼んで区別しています。

そして甲羅の前縁が明らかに張り出しているため、タラバガニよりも丸い輪郭をしています。

茹で終えると、さらにタラバガニとの区別がつきにくくなります。

ですが、アブラガニの甲羅の中央の少し下のところ(心域)のトゲは4本となっていて、タラバガニは6本ですから、ここで見分けることが可能です。

色々なエリアに生息していますが、タラバガニに比べると少し北方に分布しています。

また、タラバガニよりも深い海を好みます。

さらに言えば、日本近海にはあまりいません。

タラバガニと似たような方法で活用されていますが、タラバガニに比べるとリーズナブルです。

ハナサキガニの特徴

これもタラバガニ科です。

アブラガニやタラバガニに比べると、額角の先端が丸いですし、歩脚が短く太いです。

そのため見分けるのは難しくありません。

全体の印象として、「ずんぐり」ということになるでしょう。

生きている状態の甲羅の背面は基本的に焦茶色です(個体による)。

ですが、熱を加えると綺麗な朱色になります。

ハナサキガニという名前は、産地としてよく知られている花咲半島(現在の根室半島)から来ているとされています。ですが、「熱を加えたときの花が咲いたような色合い」が由来であるという説も存在します。

北海道~オホーツク海、ベーリング海、カムチャッカ半島などに生息しています。

水深20~190メートルほどの場所で暮らしています。

6~7月頃が産卵期。

甲長は15センチ程度。

主に4~9月頃に漁獲が行われ、方法としては「カニかご」がメインとなっています。

ハナサキガニの美味しい食べ方

茹でて食べるのが一番人気のようです。

また、生のハナサキガニを炭火で焼いた「焼きガニ」や、ブツ切りにして味噌仕立てにした「鉄砲汁」なども美味しいです。

ズワイガニの特徴

こちらはクモガニ科に分類されます。

日本で最も知名度の高いカニと認識している人も多いのではないでしょうか。

古くから食されてきたためか、呼び方もたくさんあります。

まず、「大型のメスのズワイガニ」のことを「ズワイ」と呼ぶ場合が多いです。

そして、山陰地方の「マツバガニ」、福井県の「エチゼンガニ」なども有名です。

また、オスはメスの半分程度しかなく「コウバコ」「セイコ」「セコ」などと呼ばれることもあります。

ズワイガニは日本海、銚子沖~北海道、ベーリング海~アラスカ、北アメリカ西岸などに生息しています。水深40~600メートルほどの泥底で暮らしており、漁場の水深は180~360メートル程度となっています。

甲羅は三角形で丸みがあります。

歩脚はかなり長く、オスの甲幅が18センチ、メスでも11センチほどとなります。

オスは9歳ほどで生殖できるようになります。

この段階で最後の脱皮を5~10月頃に済ませて、交尾をして、抱卵をします。抱卵を18か月ほど続けたら、孵化します。

メスは、抱いている卵が孵化する時期には、卵巣が熟しており、脱皮せずにまた交尾をして、産卵をします。

メスは成熟後に脱皮しませんから、オスよりも身体が小さいのです。

漁獲方法のメインはカニかごや底引き網。

富山県よりも西では11月~3月頃に漁獲をします。

主な産地は、石川県、福井県、北海道、鳥取県、兵庫県など。

ズワイガニの美味しい食べ方

ズワイガニの旬は冬です。高級ガニ。

茹でたり、刺身にしたりするのが人気ですが、酢の物、焼きガニ、カニすきなどで食しても美味しいです。

ケガニの特徴

こちらはクリガニ科です。

日本海全域、茨城県~アラスカ沿岸までの北部北太平洋まで広く生息しています。

特に北海道付近、太平洋、オホーツク海に多く分布しています。

水深150メートルよりも浅い位置で過ごしている個体が多いです。

甲羅は特有の硬い毛で覆われています。

オスはタテ長の楕円形、メスは円形に近いフォルムとなっていますから、簡単に性別を見分けることができます。

ちなみに甲長15センチのオス、12センチのメスが最大個体です。

交尾期は7~3月頃(釧路以西海域)。

そして、産卵期は10~3月頃です。

漁獲方法のメインはカニかご。

ちなみにケガニが脱皮してすぐの段階では、甲羅が綺麗な桃色であり、柔らかいです。

ですがそこから4~6か月ほど経過すると、茶色くなっていき、汚れたような印象になります。ただ、身入りは良くなります。そのため「汚れているように見えるケガニ」のほうが、同じサイズでも高額になるのが普通です。

ケガニの美味しい食べ方

茹でて食べることが多いですが、鍋の具材にしたり刺身をして食したりしても美味しいです。

また、ケガニはカニミソ(肝臓・膵臓)の量が多いカニとしても知られています。

ガザミの特徴

ワタリガニ科です。「ワタリガニ」と呼ばれることが多いです。

「ワタリガニ(渡りガニ)」という名前の由来は、最後の脚が「遊泳脚」であることから。

北海道南部~九州、韓国、中国に生息しています。

干潟から水深30メートルほどまでの浅い海にいて、砂泥底で暮らしています。

「横長のひし形」ともいうべきフォルムの甲羅。

大きく頑丈なハサミを持っており、甲幅は25センチほどです。

交尾期は9月10日~10月20日頃まで(瀬戸内海)。

オスが脱皮してまだ柔らかい段階で交尾をします。

ガザミは晩秋には沖合の深い場所にまで移動するため、そこを狙って刺し網(冬は底引き網)で漁獲します。

ワタリガニの本来の旬は秋からなのですが、ズワイガニと被らないようにするために春から夏に売り出すことが多いです。実際、日本海ではズワイガニを冬頃に漁獲することはあまりありません。

ワタリガニの産地としては、有明海、瀬戸内海、伊勢湾、三河湾、東京湾などの知名度が高いです。

また、韓国や中国などからの輸入量も多いです。

ワタリガニの美味しい食べ方

茹でて食べるのが普通です。

また、カニミソと卵巣が美味であるため、産卵前のメスは高額です。

ワタリガニが鍋物の具材になることもありますが、普通はオスの「切りガニ」が使われます。

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