生きていくために必要な術 魚に擬態する魚

食物連鎖が常に成立している自然界では、強いものや大きなものが弱いものや小さなものを食べることで成り立っています。海で生きる小さくて弱い生き物は、敵に襲われずに生命を全うできるように生きるための工夫をしています。例えば群れを作る、物陰に隠れる、砂に潜る、毒をもつ、岩や海藻などに擬態するなどその方法は様々です。

その中で今回は魚が魚に擬態する種類を紹介したいと思います。

擬態とは?

擬態とは、、、体の色や形を岩や海藻、サンゴなど周りの景観に似せることにより身を隠すこと。

例えばヒラメやカレイは砂に潜り、さらに体の色を砂にそっくりの色にすることによって身を隠します。敵から見つかりにくいのもありますが、一番は獲物に気付かれにくくするためです。

また、オコゼの仲間は体表の色や体の形が石や岩にそっくりな為、こちらも獲物に気付かれずに捕獲することができます。

魚に擬態とは?

魚に擬態するとはどういうことなのでしょうか?
これは種類を挙げて説明しましょう。

暗褐色の体に白い斑点模様が多数あり、背中部分の少し後方よりに大きめの黒い斑点が1つあります。棲んでいるのは暖かいサンゴ礁域の岩陰などで、模様も棲んでいるところもハナビラウツボに似ています。背中部分の斑点模様をウツボの目に見立てて、尾鰭の方をウツボの顔側とし擬態していると考えられています。

海のギャングのウツボに擬態していれば、敵も襲いにくくなるという作戦なのでしょう。

この魚が擬態している魚はかなり似ています。ノコギリハギが擬態しているのはシマキンチャクフグというフグの仲間です。シマキンチャクフグはフグ毒でも知られている「テトロドトキシン」と麻痺性貝毒の主成分である「サキシトキシン」の2種類を持っています。ノコギリハギは強い毒をもつシマキンチャクフグに擬態することにより、自分の身を守っていると考えられています。

ちなみにこの2種類はかなり姿形が似ており、パッと見るだけでは同じに見えるほどです。見分け方は背ビレを見ます。ノコギリハギには背中とお腹の後方に体の半分を覆う大きな背ビレと尻ビレがありますが、シマキンチャクフグのヒレは、ノコギリハギにくらべるとどちらも小さいです。そこはハギの仲間とフグの仲間の違いがはっきり出ています。

この魚はホンソメワケベラという魚に擬態しています。こちらの2種もかなり似ており、しかもニセクロスジギンポはかなりたちが悪い魚です。ホンソメワケベラはクリーニングフィッシュとも呼ばれ、魚たちの体表や口内の寄生虫や食べかすなどを掃除してくれるとても働き者の魚です。その為魚たちもホンソメワケベラは襲ったりすることはありません。

一方ニセクロスジギンポはホンソメワケベラに擬態し、ホンソメワケベラと勘違いし身を許した魚に近づき、その魚の鱗や肉をついばんで食べてしまいます。その後すぐに逃げてしまうため襲われる隙も見せません。

※過去の記事「行列ができるクリーニング屋さん ホンソメワケベラの話」も読んで見てください

今回は3種類の魚に擬態する魚を紹介しましたが、魚に限らず擬態する生き物は海にたくさん生活しています。生き物たちの海で生き抜く術は人間の常識を外れた面白いばかりですので、また記事で紹介していきたいと思います。

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