水族館で人気のある魚といえば、細長い体を巣穴から半分出してゆらゆらと揺らしているチンアナゴですね。ぬいぐるみなどのグッズもたくさんあり、購入されたことのある方もいらっしゃると思います。
今回は愛くるしいチンアナゴの詳しいお話をしていきたいと思います。
チンアナゴの生態
何の仲間?
チンアナゴはウナギ目アナゴ科チンアナゴ属に分類され、その名の通りアナゴの仲間です。細長い蛇のような体つきはアナゴなどに似ています。またウナギやアナゴのように食用にはなっておらず、食べても食べるところが少なく、あまりおいしくないとも言われています。
チンアナゴの名前
チンアナゴの「チン」という由来はどこからきているのでしょうか。「チン」は犬の「狆(ちん)」からきているのです。
狆に顔つきが似ていることからチンアナゴと名が付いたと言われています。
英語では「Spotted garden eel (斑点のある庭のウナギ)」と呼び、サンゴ礁域の砂地の庭に生える草木のようなウナギ目の魚という由来があるそうです。
チンアナゴの体
チンアナゴの全長は30~40㎝ほどあり、そのうち体の下半分が砂の中に入っています。警戒心が強く他の生き物が近くを通るたびに、砂の中へと出たり入ったりを繰り返しています。
移動するときも稀にありますが、蛇のように体をくねらせながら泳ぎ、尾の方から砂の中に潜っていきます。
体にはチンアナゴのシンボルの黒い斑点模様が5か所にあります。体の側面に左右対称に2か所ずつと肛門に1つ。頭に近い黒点にはえらと胸びれがあります。
肛門は下半身のさらに尾の方寄りにあるため、いつもよりも体を砂の外に出して肛門が出たところで排泄をします。
やはり臆病とはいえ巣穴では排泄したくないようですね。
チンアナゴの食事
チンアナゴは主に動物プランクトンを食べています。
チンアナゴはサンゴ礁域の潮通し良い所に生息していますが、それはより沢山のプランクトンが流れてくるような場所を選んでいるのです。
潮の流れてくる方向に顔を向けてプランクトンが来るのを待っています。決して自ら砂を飛び出して餌を採りに行くということはしません。
水族館でも冷凍のプランクトンや卵から培養させた生きたプランクトンを水槽の上から流し込むように与えています。
かなりの量を与えますので水槽が少し濁ったようになります。もちろん水槽は海のように広くはありませんので、どうしても一か所に密集してしまいます。そうするとチンアナゴ同士の距離が近くなり、餌の争奪戦が始まります。
水槽の水の流れは一定方向ですので、その流れの最前列のチンアナゴたちは餌を沢山食べられます。しかし、前の方でどんどん餌が食べられてしまうので、後列になればなるほどあまり餌にありつけなくなってしまうのです。
それに気が付いたチンアナゴは稀な全身を出しての移動を始めていくのです。
チンアナゴの仲間
展示しているチンアナゴの水槽にはどの水族館でも、だいたいチンアナゴのほかにもう1種類展示しているところが多いです。
それはニシキアナゴという種類です。オレンジ色と白色の縞模様が鮮やかで模様以外はチンアナゴと体つきはそっくりです。
チンアナゴと共に同じ方向を向きプランクトンを食べて生活しています。水槽では割とニシキアナゴ同士で固まっていることが多いです。
水族館のチンアナゴの1日
ここからは水族館で生活しているチンアナゴの1日を紹介します。
早朝(開館前)
暗い水槽で昼行性のチンアナゴは、巣穴に頭まで潜るか頭だけを出して体を休めています。
朝(開館前 照明ON)
水槽の照明が点灯し水槽が明るくなると、時間をかけてゆっくりとチンアナゴたちが顔を出し始めます。
飼育員が水槽の上から掃除や水温を測ったりすると、すぐに巣穴に潜ってしまい全く姿が見えなくなってしまいます。作業が終わった後に朝食の餌を与えると、張り切って顔を出して食べ始めます。
そしてそのままいつものように巣穴から体を出した状態になります。
朝~昼(開館中)
たくさんのお客さんに観られるチンアナゴ。基本水槽が明るく、水槽の外の観覧通路は暗くしてあるのでチンアナゴからお客さんの姿は見えにくくなっています。それでもお客さんの動きなどで驚いたチンアナゴは砂に潜ってしまいます。
チンアナゴは場所争いなどの為に、頻繁に喧嘩をします。喧嘩とは言っても口を開けてにらみ合うというかわいらしい喧嘩です。
夕方
もう一度餌をもらいます。お客さんにも餌を食べる様子を見てもらいながら、チンアナゴたちにまんべんなくいきわたるように沢山与えていきます。
やはり同じ方向を向いて餌を食べる様子は可愛らしく、面白いので人気の理由でもあります。
夕方~夜(閉館)
閉館してお客さんが居なくなると、水槽の照明が消えてチンアナゴたちは徐々に砂の中へと潜って体を休め始めます。割とこの時間に移動するチンアナゴを見ることが多い気がします。
今日もお勤めご苦労様でした。
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