日本食には欠かせない食材の一つである海苔。
お寿司やおにぎりなどのご飯ものだけではなく麺類や様々な食材にあう素晴らしい食品の一つです。
普段何気なく食べている海苔ですが、どうやって作られているのでしょうか?
今回は愛知県常滑市の鬼崎漁協へお邪魔して、特産品の『鬼崎のり』がどのように作られるかを取材してきました。
鬼崎のり養殖レポ
ここでは、海苔を養殖し、わたしたちが普段口にする「板のり」までの加工を一貫して行っています。
私たちが普段口にする海苔のほとんどは養殖です。
もちろん天然ものの「岩のり」も存在しますが、島根県や北海道南西部などの一部地域でしか採取できず、生産量も少ないため私たちの消費量には到底足りません。
なので、野菜のように海苔の種となる胞子を育て、食べられるようなサイズにまで育てていく養殖が必要となります。
養殖海苔とは言っても、養殖する地域や育てる時期、養殖の方法によっても味や食感は様々。それぞれの特性を生かした海苔が各地で生産されています。
海苔の養殖は、check肉眼では見ることが難しいほどの海苔の種(胞子)を網に付けるところから始めます。
海苔は温度にとても敏感で、水温23℃以下でないと成長することができません。
水温の高い春~夏にかけては胞子の状態でカキやホタテの貝殻の中に潜んで、貝殻に含まれる石灰分を養分にしながらひっそりと水温が下がるのを待ちます。
そのため、海苔の胞子がついた貝殻は普通の真っ白なホタテやカキの貝殻とは違って真っ黒に見えます。
養殖網への種付け
水温が下がってきた9月ごろになると、鬼崎漁協の漁師さんたちはこの胞子のたくさんついた貝殻から新たに海苔の胞子を放出させて養殖網に付着させていきます。(種付け)
写真の手前にある茶色の棒に海苔の胞子を排出する貝殻が縛りつけてあり、人工的に水温を下げることによって胞子を放出させています。
このたっぷりと胞子が含まれた海水を「水車」と呼ばれる大きな筒にまかれた真っ白い海苔網につけて、網にたっぷりと海苔の胞子をくっつけていきます。
この筒の大きさは人間の2倍近くもあるので大迫力です!
シーズンになるとこの作業が鬼崎付近の蒲池漁港などでも行われ、たくさんのビニールハウスを並べて次々と種付けをしていきます。
種付けが終わって、海苔の胞子を付着させた網はまだ海中には出すことができません。
海水の温度を見極めながら、じっと冷え込むのを待つのです。
これがとても難しく、鬼崎漁協の平野さんいわく
「網を張りこんでから17日後の海水温が20℃を切らないとせっかくの芽が枯れたり、落ちたりしてしまいます。なので10月中旬くらいまで冷凍庫の中に入れて適切な時期まで保管します。」
一言で「適切な時期」とはいっても長年海や海苔と付き合ってきた経験や勘による見極めが本当に大切なんだなと専門的なお話をたくさん伺いながらしみじみと実感させられました。専門用語の多い会話は難しかったですが、たくさん勉強させていただきました!
海での養殖
10月半ばになって、海水温が下がってきたらいよいよ本格的に海での養殖が始まります。
先ほど海苔の胞子をつけた海苔網を海に張っていく方式には「支柱式」と「浮き流し式」の2種類があります。
基本的には水深の深さによってどちらかを選ぶのですが、柱(支柱)を海に打ち込む必要のあるcheck「支柱式」は水深が浅いところを中心として行う養殖方法です。
注目するのは潮の満ち引きで、満ちている時は海苔が海水に浸かって成長し、引き潮のときには海水面から露出し、乾燥することによって海苔に付着するケイソウを取り除いたり海苔の芽を強くする効果があります。
この方法は天然の海苔の生育条件に近い環境で、これを再現するために毎日の潮の具合を見ながら網の高さを調整しています。
水深が深いところで選ばれる「浮き流し式」は、「支柱式」で海苔がある程度成長してから張り替えられます。
この方式では浮きや錨などで調整することによって海苔網が水面に浮くように張られています。
この方式で育てられた海苔はcheck長時間海水に浸かったままで収穫を迎えるので、黒くて艶のある海苔に仕上がるのが特徴だそうです。
海苔の中でも最も高品質と言われるのが、網から一番最初に取った「初摘み」と呼ばれるものです。
栄養が詰まっていて柔らかいため品質が良いのですが、量が取れないため希少品としてセリ市でも高値で取引される高級品となります。
海苔は一度の収穫で終わりではなく、成長を待って何度か収穫できるのですが、やはり栄養をたっぷり持って成長した初摘みは別格!緑茶の初摘みの新茶と似ていますね!
鬼崎漁協は定期的に網を張り替えることによって、高品質な「初摘み」の収穫量を増やす努力を行っているそうですが…
網の張り替えが行われるのは寒さの厳しい12月下旬から2月中旬にかけて。
この間に何度かの張り替え作業がを行いますが、遮るもののない海の上で寒風に吹かれ、塩水を浴びながらの作業は非常に過酷な労働です。
そんな中手作業で網を張り替えていく漁師さんの苦労にはただただ頭が下がります。今まで気軽に食べていた海苔がこんな大変な作業に支えられていたとは…
まとめ
漁師さんたちの情熱を傾けて作られた海苔を、もっとしっかり味わって食べてみたいと思いました。
次回は海苔の収穫と、収穫された海苔が見慣れた四角い海苔になるまでについての取材です!
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