海老の食べ方と取引の歴史

エビ市場 とと

今までいろいろと書いてきた海老コラムですが、今回は海老の歴史について語っていこうと思います。え、歴史なんて堅苦しいよ、なんて思わないでくださいね。

そもそも人間が海老をいつごろから食べ始めたか不思議に思いませんか。今でこそ「海老=おいしい」というイメージがついており、様々な料理に活用されているので食べることに違和感をもちませんが、最初に食べた人は非常に勇気が必要だったのではないでしょうか。

なにせ非常にグロテスクな見た目で、大きな虫のような姿をしています。

少し話はずれますが、タコなんかは日本では食べるのが当たり前ですが、最近まで海外では悪魔の生き物と呼ばれ、食べる国は限られていました。

このように見た目などからそもそも食べる習慣がない生き物は多くいます。

話を戻しますが、その中で海老はどうして日本人に受け入れられてきたのでしょうか。不思議に思いませんか。この不思議について今回は歴史を踏まえながら深堀をしていこうと思います。

日本で海老が食べ始められたのはいつ?

古くから日本人に愛されている海老ですが、いつごろから海老を食べてきたのでしょうか。

これについては諸説ありますが、check縄文時代から食べられてきたという説が有力です。

文献として海老が食べられた記録が残っているものは733年に記された「出雲風土記」が最初といわれています。

このころは海老を養殖するという概念はなく、基本的に漁に出てとれる天然のものを食していました。

海老の食べられ方はいろいろあり、室町時代では海老は祝いの席で出されるようになり、武家の結婚式で伊勢海老が出されておりました。

また海老といえば代表格の料理である天ぷらですが、戦国時代末期もしくは江戸時代初期にポルトガルから伝来したと考えられており、checkポルトガル語で「調理する」のテンペーロが語源になっているというのが有力です。

文献上では1669年に記された「料理食同記」が最初といわれていますが、料理法の記載がないため、一般的には1748年に記された「歌仙の組糸」が最初の料理法とも言われています。

江戸時代には鎌倉近郊でとれた大型の海老を鎌倉エビと呼んでおり、井原西鶴の浮世草子にも記載があったため当時では有名だったとうかがい知れます。

ただ関西地方では鎌倉エビよりも伊勢エビの名称がよくつかわれていた模様です。大正時代には東京湾でとれた中型の海老を大正海老と呼んでおり、この海老の特徴として縞々模様を有しており、それが車輪に見えることから車エビとも呼ばれました。

1970年代に入ってくると、東京湾の芝浦で小型の海老がたくさん獲れ、この海老を芝エビと名付けました。

そして近年に入り、近郊でとれる芝エビや車エビがだんだんととれなくなってきました。それに伴い、芝エビの代わりにバナメイエビを、車エビの代わりにブラックタイガーを海外から輸入して使うようになっており、昨今の食卓の主流はバナメイエビとなってきました。

こう考えるとバナメイエビを食べるようになったのは意外と最近の話ということに気付いてきます。

世界の海老事情は?

日本での海老事情については語ってきましたが、世界ではどうでしょうか。皆さんはどこの国が一番古いと思いますか?

これには諸説ありまた記録として残っていないものも多いため様々なことが考えられますが、認知されている説としてcheck約4000年前の中国長江周辺が始まりとされています。

当時長江の治水工事を行うため焼き払いをした際、同時に自然に生息する海老を焼き払ってしまい、香ばしい匂いがしておいしそうであったことから海老を食べる文化が生まれたとされています。

check

当時の中国では海老を魚介類というよりは昆虫類のように扱われていた模様です。この時代を皮切りに世界中でも海老を食べる文化が続々と生まれてきます。

中国の広東料理では游水蝦を白灼(バイツォー)という素揚げにしてよく食べられています。アメリカではカクテルシュリンプとして茹でた海老を食べています。

東南アジアではさらに料理の幅は広く、ベトナムでは春巻きにしたり、フォーにいれたり、海鮮レストランで塩焼きとしても出てきます。

ただ反対に海老を食べない文化も生まれてきました。代表的な例でいうと宗教上食べられないという理由が挙げられます。

ユダヤ教やキリスト教のcheck一部宗派ではうろこのない海の生物を食べることを禁じているため海老は食べられません。

またオーストラリアではロブスターや海老を生きたまま調理することを禁止されています。そのためさばき方に至っても即死させてからさばく方法が採用されており、調理する側も気を付けなければなりません。

このように日本だけでなく世界中でも海老という存在は食べるにしても食べないにしても意識をしなければならない存在感の強いものとなっていきました。


【ベトナムで販売されるバナメイエビ】

【カクテルシュリンプ】

【海老のカシューナッツ炒め】


【生春巻きに入っている海老】

海老は世界の宝!?年々増える海老取引

日本だけでなく世界中で食べられている海老ですが、どれほどの量を取引されているかご存じでしょうか。

まずは世界中の水産物の取引量をみてみましょう。国際連合食糧農業機関(Food and Agricultures Organization:FAO)の統計によれば世界の漁獲と養殖水産物の総生産量は年間約1億4千万トンで、中国がダントツの5,000万トン弱です。

続いてペルーが1,000万トン前後。日本、インド、インドネシア、アメリカ、チリなどが400から600万トン前後で続きます。

check

なかでも養殖水産物の生産量は約6,800万トンまで伸び、総生産量の半分を占めるようになりました。

FAOの推計では今後の需要を予測するとまだ4-5千万トンは足りないとされております。上記の情報は少し古いものでもあるので、近年では漁獲の限界を養殖が補い、すでに6割を越えていると推計されています。

では海老についてはどうでしょうか。食用になる海老は200種類近くといわれますが、地産地消を除くと市場に出回るメジャーな海老の品種はそれほど多くはありません。

また貿易取引の対象となる海老の品種はさらに数えるほどであり、高価な伊勢海老類を除くとcheck国際間で取引されるのはほとんどがクルマエビ科のバナメイエビやブラックタイガーで絞めています。

そして世界の海老総生産量は平均して年間670万トンくらいであり、養殖はその半分くらいといわれています。

FAOの統計では海老の取引量は国際間取引水産物のトップではありませんが水産物全体の5%くらいを占めます。

ただし金額では第2位に位置しており、全体の13%を超えるといわれますから超高額な食材ですね。

生産国としてはインド、中国を含むアジア諸国が世界の生産地となり90%前後を占めています。値段が高いこともあり中型の海老はどこの国でも中産階級以上の食材といえます。タイも同様で海老は輸出用が圧倒的に多く、大衆的とはいえません。

いかがでしたでしょうか。

海老を食べ始めた歴史をさかのぼると4000年近くも昔になり、そこからさまざまな料理として親しまれてきた海老であり、世界中でも愛されております。

しかも水産資源の中で結構高額な値段をしているという点も驚きですね。

ただ最近は日本での海老消費量が年々減っており、今では日本人の一人当たりの海老消費量はアメリカ人よりも低いと言われています。

世界の海老消費が増え、日本の海老消費が減った両面はあると思いますが、少し寂しくも感じてしまいますね。

日本人の心から離れつつある海老ですが、海老の歴史に触れ少しでも興味を持って美味しく食べていただければ幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました