近年、養殖技術は発展しており、ブリやマダイなど養殖物をスーパーで見る機会も多いと思います。その一方で、「養殖ガニ」がスーパーで並んでいるところは見たことあるでしょうか?
実は、カニの養殖は大変難しく、上海ガニ(モクズガニ)やワタリガニなどごく一部の種類でしか行われておらず、また流通する数も少ないのが現状です。
今回は、なぜカニの養殖が難しいのか、大きな2つの理由を中心に解説したいと思います。
カニの養殖が難しい理由
カニの養殖が難しい理由を紹介する前に、まずは養殖産業が成り立つために必要な要素についてお話します。
養殖ももちろん商売ですので、養殖したものを売って利益が出なければ続けられません。そして、利益を出すためには、高密度で多くの匹数を短期間で育て上げて売らなければなりません。
例えば、マダイの場合、25mプールの広さで約5000尾飼育出来、出荷サイズ(2㎏程度)になるまで約2年かかります。
養殖マダイ1尾で2000円として考えると10億円の収入になりますが、そこから2年分の施設購入・維持費(電気代など)やエサ代などのコストを差し引いたものが利益になる訳です(!上記計算はあくまで目安です)。
養殖では、高密度・短期間で育てることが必要という話をしましたが、カニの養殖の問題点は正にこの2つに由来しているんです。
理由① 共食いをするため、高密度飼育ができない
共食いというのは同じ種類の生き物同士でも捕食し合ってしまうことを言いますが、カニの仲間も高密度でいると共食いをしてしまいます。
低密度であれば積極的には共食いしませんが、脱皮直後で柔らかく動きの遅いものが食べられてしまうこともあるほどです。
また、食卓でお馴染みのズワイガニなど深海にすむカニは、check深海はエサが少ないためか共食いも珍しいことではありません。
そんな訳で、共食いを防ぐためにはカニを1匹づつ個別に飼育しなければいけないため、広い飼育設備が必要になってしまいます。
それだけの維持費と手間をかけても少ない数のカニしか飼育出来ない、つまり利益が出ないんですね。
理由② 成熟するまで5~10年近くかかるため、短期間で出荷できない
カニの種類にもよりますが、例えばcheckズワイガニだと1年に1回の脱皮で5㎝ほどしか大きくならず、成熟して繁殖できるようになるまで10年ほどかかると言われています。
もう少し早く出荷するとしても、最低でも5~7年は飼育しなければなりません。マダイが2年で出荷できると考えると、マダイの2~3倍の飼育コストがかかってしまうというわけなんです。
理由①と②を合わせると、5~7年毎日エサあげて管理しても出荷できるのは少数となってしまい、利益どころか赤字になってしまいますよね。
この理由の他にも、卵から稚ガニにするまでが難しいことなどもあり、現在カニの養殖はほとんど行われていないという訳なんです。
カニの飼育は難しい?家庭でできるカニの飼い方
さて、ここまで「カニの養殖は難しい」という話をしてきましたが、check実は「カニの飼育」自体は難しいことではありません。
むしろ、魚に比べて丈夫だったり、雑食性でなんでも食べるため簡単といっても過言ではありません。
…という訳で、川で簡単に捕まえることが出来る「サワガニ」を例に、家庭でも簡単にできるカニの飼い方を紹介したいと思います。
ここでは、飼育方法を5段階に分けて解説しますね。
- カニの入手
サワガニは綺麗な川にすむ3~4㎝ほどの小型のカニです。川の上流の石の下に隠れていることが多く、川辺の石をひっくり返せば見つけることが出来ますよ。
サワガニは陸上でもすぐに死ぬことはありませんが、殻の中にある鰓が乾燥すると呼吸が出来なくて死んでしまうため、虫かごやバケツに薄ら水が張る位の少量の水を入れて持ち帰りましょう。
前述の通り、一つの水槽に何匹も入れると共食いをしますので、水槽の大きさにもよりますが1~3匹程度持ち帰るようにしましょう。
- 水槽の準備
水槽(虫かごでも可)とエアレーションがあればOKです。エサなどで水が汚れるので、ろ過装置もあるとなお良いです。
サワガニは陸上にもよく上がるので、check水槽の半分は砂で傾斜を作って陸上部分にしてあげてください。
自然界では、石の下や岩の窪みで隠れているので、石や砂など隠れられるようなものを水槽内にレイアウトしてあげると落ち着きますよ。
また、姿に似合わずとても脱走上手なので、水槽には必ず蓋をしてくださいね。
また、サワガニはpoint淡水性のカニなので水道水で飼えることも、飼育が簡単な理由の一つ!ただし、水道水には消毒用の塩素が入っており、そのままだとカニにとっては毒になります。
バケツに水道水を汲んで日光に3日さらした水を使うか、熱帯魚ショップでカルキ抜き(液剤)を購入して、塩素を中和させた水を使いましょう。水替えは週1回、およびエサで水が汚れたときなどに適宜行ってください。
- 餌やりについて
サワガニは雑食性でなんでも食べます。ペットショップで売られている金魚やザリガニのエサ(ペレット)などが手軽で必要な栄養がとれるのでおすすめです。
量は1日1回でほんのひとつまみ程度で大丈夫です。逆にエサを食べる姿が可愛いからと言ってやり過ぎてしまうと、余ったエサで水が汚れてしまうので注意が必要です。
- 飼育・観察
水槽に入れた後は、毎日しっかり観察して、不調の兆候が見られないかチェックしましょう。
エサを食べなくなる、動きが鈍くなるなどの不調が見られる場合は、以下のことが原因として考えられます。
・水質の悪化(換水不足、ろ過能力不足)
・水温の変化(冬場の低水温、夏場や直射日光での高水温に注意)
・他のカニにつつかれたりしている
また、エサを食べずにじっとしている場合、不調ではなく脱皮直前という可能性もあります。その場合は気になって触ってしまうと脱皮に失敗してしまうため、静かに置いておいてあげましょう。
また、脱皮直後も殻が柔らかく不安定なため、そっとしてあげてください。同居ガニがいる場合、脱皮直後に食べられてしまうこともよくあるため注意が必要です。原因を見極めて、換水したり、不調の個体を移動させたりなどの対応を行ってくださいね。
まとめ
・養殖ガニはほとんどいない
・共食いや成熟まで時間がかかることから、養殖しても利益が出ない
・カニの飼育自体は、家庭でもできるほど簡単
カニの養殖には問題点が多く、現在カニの養殖はほとんど行われていません。
しかし、養殖技術の研究は行われているので、近い将来スーパーにも「養殖ガニ」が並ぶ日もくるかもしれませんね。今後の研究に期待しましょう!
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