ウツボは「ウナギ目」に属する海水魚。ヘビのように長い体と鋭い歯、グロテスクな見た目から、あまり食用としてのイメージがないかもしれません。凶暴な性格で、タコや白身魚、イカなどをエサにする肉食性。海の岩陰やサンゴ礁に潜み、獲物を待ち伏せるスタイルも迫力満点です。
実はそんなウツボですが、おいしくて、しかも健康効果も高いって、知っていますか?
ウツボの栄養価__“海の滋養食”がもたらす驚きのパワー
見た目のインパクトとは裏腹に、ウツボは栄養価の高い魚として知られています。高タンパク・低脂肪で、ビタミンA・D・E、鉄、DHA・EPA、コラーゲンなど、世代を問わず健康維持に役立つ栄養素が豊富。まさに“海の滋養食”とも言える存在です。
世代別にうれしい栄養素
- ・成長期の子どもには…骨や筋肉の発達を支えるタンパク質とカルシウム
- ・受験生には…集中力や記憶力をサポートするDHA
- ・美容を意識する世代には…肌の潤いを保つコラーゲンや抗酸化作用のあるビタミンE
- ・メタボが気になる世代には…体脂肪の蓄積を抑える低脂質・高タンパクのバランスに加え、EPAの血流改善効果にも注目
- ・高齢世代には…足腰の健康維持に欠かせないビタミンDとカルシウム、さらにDHAによる認知機能のサポートにも期待
部位別に見るウツボの栄養特徴
栄養豊富なウツボですが、部位によって得られる栄養素も異なります。それぞれの特徴を見てみましょう。
身の部分:白身魚 + 鉄分
ウツボの身は白身魚に近く、消化吸収の良い高タンパク質。
さらに鉄分は、カツオやマグロといった青魚に匹敵、もしくはそれ以上とも言われ、貧血予防や女性の健康維持におすすめです。
皮の部分:たっぷりコラーゲン + オメガ3系脂肪酸
厚みのある皮には、肌や関節の健康を支えるコラーゲンがたっぷり。煮こごりやスープにすると、栄養を余すことなく楽しめます。
さらに皮下脂肪には、EPAやDHAなどのオメガ3系脂肪酸も含まれており、血流の改善や抗炎症作用、脳の健康維持などに役立つとされています。これらの脂肪酸は体内で合成できないため、食事からの摂取が非常に重要です。
ウツボを食べる地域と料理法
意外にも、ウツボをおいしく食べる文化は日本各地に根付いています。特に高知県や和歌山県などの太平洋沿岸地域では、古くからウツボ料理が親しまれてきました。以下に代表的な料理をご紹介します。
ウツボのたたき

皮付きのウツボを炙った料理。カツオのたたきとは違って、皮面だけでなく身までしっかり火を通すのが特徴です。薬味(玉ねぎ・ねぎ・大葉など)とともに柑橘ポン酢でさっぱりと。
身は鶏肉のような食感で、旨味があり、炙った皮のとろける食感が格別です。
ウツボの唐揚げ

淡白な身とぷるんとした皮に、サクッと香ばしい衣が絶妙。
醤油で濃い味付けをするよりも、塩でシンプルに仕上げ、柑橘を搾って食べるのがおすすめです。
ウツボの煮付け

甘辛く煮た定番料理。特に翌日が絶品です。冷蔵庫で冷やすと、コラーゲンたっぷりの煮汁がぷるぷるの煮こごりに!
高知の地酒とともに味わう贅沢なひとときをどうぞ。
まとめ ― 見た目に惑わされず、海のスーパーフードを味わってみよう
8月にNHKのEテレ『ヴィランの言い分』で特集されたウツボ。実は、その見た目からは想像できないほど、栄養価と美味しさを兼ね備えた魚です。特に鉄分・コラーゲン・オメガ3脂肪酸など、美容と健康にうれしい成分が満載。見た目にとらわれず、一度チャレンジしてみる価値ありです。
【参考文献】
Fazio, F., Piccione, G., Saoca, C., Arfuso, F., & Ferrantelli, V. (2023). Nutritional Value and Risk Assessment of European Eel (Anguilla anguilla) Muscle Consumption. International Journal of Environmental Research and Public Health, 20(3), 2257. https://doi.org/10.3390/ijerph20032257
Celi, M., Filiciotto, F., Macrì, B., Mazzola, S., & Buscaino, G. (2021). Fatty Acids Profile of Farmed European Eel (Anguilla anguilla): Nutritional Value for Human Consumption. Foods, 10(7), 1468. https://doi.org/10.3390/foods10071468
Storelli, M. M., Barone, G., & Marcotrigiano, G. O. (2019). Heavy metals in edible fish from the Mediterranean Sea: Risk assessment for consumers. Marine Pollution Bulletin, 141, 365–370. https://doi.org/10.1016/j.marpolbul.2019.03.022
プロフィール

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ソーシャルデザイナー 石松 佑梨(いしまつ ゆり)
サッカー日本代表選手をはじめ、世界で活躍するトップアスリートの専属管理栄養士として食トレを提供する。次代を担うジュニアアスリートの食育にも力を入れる。近年では雑誌や商品、レストランなどの栄養監修に携わる一方で、絵本作家としての活動に注力している。
著書:過去最強のコンディションが続く 最強のパーソナルカレー(かんき出版)
インスタグラム:personal_curry
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