全国各地のイカの話 北海道編

函館朝市イカ とと

経験豊かな皆さんに質問です。

皆さんの記憶にある「おいしいイカ」はどこで食べたイカでしたか?

水産物の宝庫である北海道ですか?それともおいしいものであふれている九州でしょうか?いやいや、地元の水産物が一番だよ!って方もいらっしゃると思います。

水産物は千差万別で魚が育った環境、食べたプランクトンや餌、水温の状況、人間による漁獲量など様々な影響を受けるため、同じ種類の魚介類でも取れる地域や時期、もしくは年度によっても味が異なってくることが特徴的です。

その中でもcheck天然モノは養殖モノに比べて人のコントロールが効いていない分、外敵影響を強く受けるため様々な特徴を有しております。

(もちろん養殖モノは養殖業者の様々な苦労のもと品質の均一化がなされております。養殖業者の方々には感謝です。このあたりはまた別の機会に深堀させていただきますね。)

天然モノが多い魚種では「〇〇産が一番だ」とか「△△漁港は甘みが強い」「□□漁連は味が上品で煮つけ向け」などといった漁業関係者の声が多く聞こえてきます。

ただ人間の趣向というものは多種多様であり、「みんなにとっての一番」というものはなかなかありません。だからこそ魚介類は「自分にとっての一番」が肝心と私は思います。

漁業関係筋の方々と一緒にお仕事をしていると、プロになられる人ほどこだわりがしっかりされていると肌で感じます。魚介類が好きな人であれば是非とも「自分にとっての一番」を見つけてみてくださいね。

さて今回は「自分にとっての一番」を見つける手助けになればと思い、第一弾として北海道のイカにスポットを当ててご紹介したいと思います。早速一緒に学んでいきましょう。

北海道のイカについて

Q皆さんに問題です。「イガァ~イガァ~」の掛け声のもと朝捕れたイカを売り歩く行商がいる有名な街が北海道にあります。さてそれはどこの漁港でしょうか?

もしかしたら様々な地域でも同じような行商がいらっしゃるかもしれませんが、北海道でイカが有名で行商も有名といれば、そう函館です。

函館といえば北海道への空の玄関口であり、観光で有名と言えば金森赤レンガ倉庫や函館山ロープウェイの夜景はきれいですよね。また五稜郭タワーもありますし、ハンバーガーでお馴染みのラッキーピエロもあります。

旅行雑誌でも函館は数多く取り上げられていますので街自体をご存じの方がほとんどではないでしょうか。では函館が「イカの街」と呼ばれるくらいイカで有名なのはご存じでしょうか。

このあたり意外としらない方が多いように感じます。実は函館における魚種別漁獲量(平成22年時のデータ)を見てみると、スルメイカは堂々の第一位で当時は約2.3万トンが水揚げされていました。

ちなみに第二位の魚種は何かご存じでしょうか。答えはイワシで約1.4万トンが水揚げされています。なんと一位のスルメイカは二位のイワシの約1.6倍も多く水揚げされていることがわかります。

ちなみに漁獲金額を見てみても堂々の一位はスルメイカであり約63億円の金額に上ります。圧倒的ですよね。函館がイカの街であることが数字からも読み取れるかと思います。

海鮮丼は食べたことはあるけどイカが有名だとはしらなかった!という方は是非とも函館を訪れた際にはイカを食べてみてくださいね。

函館にイカが集まる理由

しかしなぜ函館がイカの街と呼ばれるほど漁獲量が多いのでしょうか。不思議に思いませんか。

実は函館の立地に影響しているのです。立地と言われてもピンときませんよね。より具体的に申し上げると、函館はイカの好漁場であり、その理由はイカの回遊するルートが関係しています。

日本周辺に生息するイカは、東シナ海から西日本海付近で季節ごとに産卵、発生すると推定されます。このうち9~11月の秋生まれのイカたちは対馬暖流に乗って日本海を、また12~3月の冬生まれは黒潮に乗って太平洋をそれぞれ北上してきます。

すると面白いことが起きます。なんと秋生まれのイカたちは5月下旬~6月初旬頃に松前沖から津軽海峡に進路をとり、冬生まれのイカたちは6月下旬~7月頃に恵山沖の津軽海峡に来遊します。つまり日本を周回しているイカが函館に集まってくるのです。

イカ自体は1年魚であり、生まれてから成長し子孫を残し亡くなるまで約1年間です。その間イカたちは動物プランクトン、小魚などの餌と生存に適した水温を求めて北上し、オホーツク海、宗谷海峡付近に到達します。

その後産卵のため折り返し南下するときに、再び津軽海峡を通過します。そのためcheck函館におけるイカの漁期は6月~翌1月と他地域に比べて長めなのが特徴的です。

山陰や北陸、東北地方にイカを水揚げする港町は多くありますが、日本海と太平洋につながる津軽海峡は両海洋を回遊するイカが交わる資源豊富な漁場といえるのです。

近年は海水温の変化の影響などからか、全国的にイカ漁の不漁が続いていますが、正確な原因はまだ解明途中のようです。ただ2020年の漁は開始月である6月の昨年同月比100%超えとのことですので徐々に回復しているのかもしれませんね。

函館でおいしいイカがたくさん獲れて食べられるといいですね。

函館のイカがおいしい理由

函館がイカの集まる漁場であることはよくわかりましたよね。ただ函館のイカは漁獲量だけでなく味も格別です。

イカの踊り食い丼は函館の名物ですので訪れた際にはぜひ召し上がってみてください。さっきまで生け簀で生きていたイカがものの1分程度で調理されてどんぶりの上に乗っているのです。そこに醤油をかけるとピクピクと動いており、見た目は結構驚きですが味は絶品です。

食感はコリコリとしており醤油をつけて食べると口いっぱいにイカの甘みがひろがってきます。またイカの独特な臭みもなく、非常に上品などんぶりを頂くことができます。

しかしどうして函館のイカはこんなにもおいしいのでしょうか。察しのいい方はすでに気づかれているかもしれませんね。

そうです、なんといっても鮮度が非常にいいのです。新鮮さを一番に考える函館のイカを支えるのは、漁船に設けられた生け簀です。そうです、漁船に生け簀がついており、生きたまま漁港まで持って帰ってくるわけですね。

もちろん一般的な流通もあり、漁獲したばかりのイカは船上で氷入りの発泡スチロールや木箱などに詰められる場合もあります。

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ただ生け簀に入れたまま漁港に運ばれるものは「活いか」として流通するため、透き通った身でコリコリとした食感が身上の鮮度が保たれるわけです。


<イカの踊り食い丼>

函館でイカ漁が盛んになった訳

函館のイカが有名なのはわかりましたが、函館のイカ漁の始まりはいつ頃だったのでしょうか。ご存じの方はいらっしゃいますでしょうか?

函館近海でのいか釣り漁が本格的に始まったのは、明治初期と言われています。イカ漁発祥の地とされる佐渡の漁師が、出稼ぎのため函館へ来た際、漁具や漁法を持ち込み、函館の地元漁民に広く伝えました。

集魚灯の漁火は当初、船上でかがり火を焚いていたようで、漁群が沖合に移動した秋の時期のみに用いていました。

こうみると佐渡と函館に意外な関係があって面白いですよね。


<函館のイカ漁船>

いかがでしたでしょうか。今回は北海道のさらに函館のイカをピックアップしてみましたが、意外と知らない事実があったのではないでしょうか。

もちろんこれはイカ漁場の一部であり、他にも有名な産地がたくさんありますのでこれからどんどんご紹介できればと思います。

皆様の「自分にとっておいしいイカ」に出会えることを祈っております。

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