海の中には陸上にすむ昆虫のような特徴をたくさん持っている魚が存在しています。
その魚はバッタのような足を持ち、チョウの羽のような綺麗なヒレを持ち、さらには秋虫のような綺麗な声ではありませんが、低音で鳴くことができるという特徴があります。
その魚の名前はホウボウ。変わった姿をしている魚ですが、かなり美味しい魚としても有名です。
今回はそんな海の変わり者、ホウボウのお話をしていきたいと思います。
ホウボウの生態
特徴的な体 ~便利な胸鰭~
ホウボウの体は特徴的な形や色をしています。頭部は角ばった形をしており、さらに硬い骨板で覆われていてかなり硬いです。
胸鰭はかなり大きく、生きているときの内側は鮮やかな青色に緑色に縁取られたウグイス色で、青色の斑点も散在してとても美しいです。上から来た敵を脅すときにはパッと広げます。また泳ぐときはこの胸鰭は綺麗にたたんで、海底近くを滑空するように泳ぎます。
虫の足のように見える胸鰭の下部の3本の鰭条(棘)は分離独立していて、これを使って海底を歩くことが出来ます。
しかもその表面には感覚細胞が発達していて、触覚・味覚器として餌を探すこともできます。
特徴的な体 ~赤い色の理由~
体は頭から尾までやや薄紫色を帯びた赤色をしており、とても綺麗な体色をしています。興奮した時などはすこし白みや黒みを帯びたりすることもあります。
ちなみに赤色をした魚はかなり派手で、海の中ではかなり目立ってしまいすぐに敵に見つかってしまいそうな気がします。
実は太陽から出ている原色の中で一番に海の中で吸収され見えなくなってしまうのが赤色なのです。つまり赤色は海の中では深いほど黒く見えてしまうのです。
赤色の魚は派手なようですが、実は見えづらい地味な魚になるのです。実際に深い所に行けば行くほど赤い魚が多くみられるようになります。
ホウボウも水深600mくらいまでの砂泥底域に棲んでいますので、赤い色の理由も分かります。
特徴的な体 ~響く低音ボイス~
冒頭でもお話しましたが、checkホウボウは鳴くことが出来る魚です。身に危険を感じた時や敵を脅す時、産卵の季節ではオスとメスの呼び合いなど、様々な場面で使われています。
浮力を調節するための内臓の一つである浮袋を震わせて、中の空気を共鳴させて音を出しています。
この鳴き声が「ホーボー」と聞こえることからその名が付いたという説もありますが、実際は「グゥ グゥ」と低い音で鳴いています。
水槽で飼育していても水槽越しに、この鳴き声ははっきりと聞こえますので、ホウボウを見つけたときは耳を傾けてみてください。
小さな時からホウボウ
地域で少し異なりますが、ホウボウの産卵期はだいたい2~4月です。大きさ1~2㎜ほどの卵を産み3㎜程の稚魚が生まれてきます。
稚魚は細長い体をしていますが、すでに立派な胸鰭はついておりしばらく浮遊生活を送ります。大きさ1㎝ぐらいには立派なホウボウの形をしていますが、体色は目立たないように黒色をしています。
5~6㎝くらいになると徐々に体も赤くなっていき、胸鰭も鮮やかな色になっていきます。
意外とのんびり屋
ホウボウは胸鰭の感覚器官を使って、底生の甲殻類や二枚貝類、ゴカイなどの多毛類、小型の魚類などを食べています。
水族館ではアサリやエビ、魚の切り身などを与えていますが、夜行性ということもあり餌を探して食べるのが少し遅めです。
水槽の底に落ちた餌を胸鰭を使って探りながら歩き、餌のそばまで行っても餌に気づかないこともよくあります。やっとのことで胸鰭や口に触れた餌を一口で丸のみにして食べていきますが、魚の割にのんびりしているように見えるその姿も魅力的な一面です。
ホウボウと人の関わり
ホウボウの漁獲
ホウボウ漁として漁をしていることは少なく、底曳き網や刺し網、また定置網でも漁獲されることがあります。
特に旬である冬から春にかけては多く漁獲され高級魚として出荷されています。
一方釣りでも人気のある魚で、ヒラメなどの底物を狙っている時の外道として釣れることがあります。しかし美味しい高級魚なため釣り人は喜んで持ち帰るようです。
おめでたい魚
昔からホウボウはめでたい魚として重宝されています。
例えばえ愛媛県宇和島市では、ホウボウの頭部の骨板を鎧と兜に見立て「強い子になるように」との願いを込めて、「お食い初め」の魚として利用されています。
美味しい高級魚
何度も言うようにホウボウは美味しい高級魚として扱われています。淡白な白身の肉は歯ごたえがあり、刺身・塩焼き・蒸し物・揚げ物・酢の物など、どんな調理方法でも美味しく頂くことができます。
白身の魚にしては100gあたりの脂質が4.2gと多めで、ミネラル類もカリウム、ナトリウム、カルシウムなども多めに含まれています。
またたんぱく質も19.6gと多く含まれておりヘルシーな魚としてもおすすめです。
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