ディズニー映画で一躍有名になったクマノミ。
水族館でも必ずと言っていいほど展示されています。英語でも「Anemonefish(イソギンチャク“Sea anemone”)」と呼ばれるようにイソギンチャクを棲み処とし、かわいらしい姿が印象的です。
今回は水族館の人気者であるクマノミの紹介をしていきたいと思います。
クマノミの生態
クマノミは何の仲間?
クマノミという名前は皆さん聞いたことがあると思いますし、姿かたちもイメージできると思いますが、一体何の仲間かご存じでしょうか?
実はスズメダイの仲間なのです。ユニークな模様などに惑わされがちですが、泳ぎ方や顔つきなどはスズメダイに似ています。
クマノミとイソギンチャク
クマノミの最大の特徴と言えば、イソギンチャクを棲み処とする事です。
一般的な魚はイソギンチャクに触れると、イソギンチャクの刺胞の毒にやられてしまい、体がしびれて動けなくなり、やがてはイソギンチャクに捕食されてしまいます。
しかし、checkクマノミの仲間は体の表面に特別な粘液があり、イソギンチャクの刺胞にやられないのです。
とある実験でクマノミの体表の粘液を、布で吹き上げた後にイソギンチャクに戻してみると、体がしびれて動けなくなっていました。
しかしこの粘液も生まれた時から備わっているわけではありません。イソギンチャクのそばに産み付けられた卵から孵化した稚魚が少しずつイソギンチャクに触れて、成長過程で徐々にその粘液を獲得していくのです。
クマノミの仲間は警戒心がとても強いため、イソギンチャクに入って身を守ってもらっていますが、逆にイソギンチャクにもメリットがあります。
イソギンチャクがクマノミを棲まわせることで、餌を捕らえられなくなります。そこでクマノミがイソギンチャクに餌を運んであげることで、イソギンチャクは狩りをしなくても生きていけるのです。
クマノミを飼育していると、水槽の底に落ちたクマノミ用のエビの切り身をクマノミは口に含んで、それをイソギンチャクまで運んであげていました。
このようにどちらにとっても利のある共生を「相利共生」といいます。
飼育下においては必ずイソギンチャクと共生させなければいけないかというと、そうではありません。
クマノミにも相性の良し悪しがあるようで、水槽にクマノミとイソギンチャクを一緒に入れても入ってくれない時もあります。
ただそんな時は、やはり警戒心の強さから岩陰に隠れたりしてなかなか表に出てきてくれません。
クマノミの性転換
次にクマノミの大きな特徴といえば、check性転換するということです。
クマノミは一つのイソギンチャクに数個体で家族のように生息していますが、その中で体が1番大きなものがメス、2番目に大きなものがオス、それ以外は性別がない状態なのです。
そのメスとオスで繁殖をして卵をイソギンチャクの付け根辺りに生みつけます。
メスがいなくなると今までオスだったものがメスへ、性別がなかった内の2番目に大きなものがオスへと性転換します。
クマノミの一生のうち、先にオスとなり後にメスへと性転換することを「雄性先熟」と言います。
この生態を知った上であのディズニー映画をみると、少しおかしなところがあることに気付くと思います。母親が敵に襲われ、生き残った主人公の息子を父親が育てますが、クマノミの生態から行くとこの父親は性転換をしてメスになるはずなのです。
まあ映画の世界の話ですから、そこで「お父さんがお母さんになりました」となると話がこじれてしまいますね。
クマノミの種類
日本に生息しているクマノミの仲間は全部で6種類います。
クマノミ、ハマクマノミ、カクレクマノミ、トウアカクマノミ、セジロクマノミ、ハナビラクマノミです。
クマノミ、ハマクマノミ、カクレクマノミには体に白いライン模様がありますが、よくそのラインの本数と種類を覚えるための語呂として
「いち ハマ に クマ さん カクレ」
と覚えたりします。
ライン1本ハマクマノミ、2本クマノミ、3本カクレクマノミという意味です。その他の3種は気合で覚えましょう。
では簡単にそれぞれの種類を紹介します。
クマノミ
6種類の中でも日本の温帯熱帯域など最も広く生息しています。成魚には体に2本の白いラインが特徴で、15cmまで大きくなります。主にサンゴイソギンチャクなどと共生します。
生息する地域によって体のオレンジが強かったり、黒ずんでいたりと個体差が激しいのも特徴です。
縄張り意識がかなり強く、自分の縄張りやイソギンチャクに近づく者は、自分より大きなものでも容赦なく攻撃してきます。
海でダイビングをしていても、クマノミの縄張りに近づくと人間だろうが、カメラだろうが近づいて睨みつけて攻撃してきます。逆に人間にとってはクマノミが自ら近づいてくるので、可愛らしく思えたりシャッターチャンスだったりします。
ハマクマノミ
温かい熱帯域で生息する種類で、成魚の頭部には白いラインが1本あります。
しかし幼魚の時は、体に2~3本の白いラインがあり一瞬ハマクマノミか疑う時もあります。成長するにつれて頭以外のラインが消えて立派な大人になるのです。
checkハマクマノミは主にタマイタダキイソギンチャクと共生していることが多いです。
ハマクマノミもクマノミに似て攻撃性が高く、水槽の掃除などする際に水槽に手を入れた時には、噛まれたりすることがあります。
痛くはありませんし、飼育しやすく環境の変化にも強い魚ですが、何度も攻撃してくるのである意味頭を悩まされる魚でもあります。
カクレクマノミ
成魚の大きさは9㎝ほどでクマノミの仲間の中でも警戒心が強い方です。体に3本の白いラインがあり、主にハタゴイソギンチャクと共生しています。
あのディズニー映画で一躍有名になったのがこのカクレクマノミです。
でも実は映画に出ていた種類はカクレクマノミの仲間であることは間違いないのですが、正確にはカクレクマノミではないのです。
あの映画の主人公は「イースタンクラウンアネモネフィッシュ」という種類で、映画の舞台であるオーストラリアのグレートバリアリーフで生息しています。
カクレクマノミはまた、白ラインやヒレの黒縁の太さもカクレクマノミより太いのも特徴です。
以上のことからcheck学問上ではカクレクマノミではなく、クラウンアネモネフィッシュが映画の主人公だったのです。
トウアカクマノミ
日本では沖縄以南に生息し、生息場所も内湾の砂泥底と限られており数も少ない種類です。
成魚の大きさは13㎝で、頭がオレンジ体は黒色、白の幅広い模様が体を覆っています。主にイボハタゴイソギンチャクと共生し、イソギンチャクの近くの小さな石や貝殻に卵を産み付けます。
水槽内では水槽の壁や配管などに卵を産み付け、親がヒレや口を使って新鮮な海水が流れるように子守りをしていました。
セジロクマノミ
背中の頭から尾びれにかけて白いラインが1本入っているのが特徴です。体の色はオレンジというより、黄色や桃色をしています。
この種類もなかなか海で見ることが少なく、特定のハタゴイソギンチャクの仲間やシライトイソギンチャクにしか棲みつかないと言われています。
check中々イソギンチャクから体を出さないので、海でも水槽でも全身を写真に収めるのが難しい種類です。
ハナビラクマノミ
背中の頭から尾びれにかけて白いラインが1本あるのはセジロクマノミに似ていますが、セジロクマノミにはない頭部の鰓ぶたにある白いラインで見分けることができます。
主にcheckシライトイソギンチャクと共生していることが多いです。
ハナビラクマノミを飼育する際に、このシライトイソギンチャクも同じ水槽に入れて飼育するのですが、このシライトイソギンチャクの飼育がまあ難しく、水流や光などシビアに調整してあげないといけません。
ハナビラクマノミも警戒心がとても強く餌を与えても、じわじわイソギンチャクから出てきて餌を1個銜えてすぐにイソギンチャクに戻る、という往復を何度も繰り返して餌を食べます。
水槽に外敵はいなくてもなかなか馴染んでくれませんが、他の種類のスズメダイ科の魚より1歩後ろに下がって生活する姿はなんだか可愛らしいです。
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