近年ブームにもなっている深海魚。
その深海魚が棲む“深海”ってどんなところなんでしょうか?
生身の人間では決して行くことが出来ないところですが、科学の進歩によりその世界が少しずつ明らかになってきました。
今回は“とと”ではありませんが、未知の世界である深海とはどんなところなのか、深海の基礎知識をお話していきましょう。
深海ってどこから?
「深海」と呼ばれるところは、水深何mからをいうのかご存じでしょうか?
実は水深200mより深い海を「深海」といいます。地球上でもっとも深いところは10920mもあり、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵というところにあります。日本で一番深い海は駿河湾であり、駿河海溝の最深部は2500mあります。
地球上の海の平均水深は約3800m、海の容積の93%を占めており0海のほとんどが深海だということがわかります。
なぜ深海は暗いのか
太陽の光が届く割合は海面に到達すると、水深1mで45%、100m付近で1%にまで減衰していきます。太陽の光は波長の長い赤色から波長の短い紫色までの光が混在していますが、水深が200mを超えると人間の目で感知するのは難しくなります。
しかし青色の光は海水にも吸収されにくく、水深1000m付近まで達しています。水深1000mを超えるとほとんど周りが見えない暗闇の世界となります。
ちなみに海が青く見えるのは、赤色の光が私達の目に届かなくなり、青い光だけが残るからです。
高い水圧
水深が10m深くなるごとに約1気圧(1cm2に約1kg)が増します。
これを水圧といい、水深100mで10気圧、水深1000mで100気圧の水圧がかかり、この水深で1cm2に103kgの重さがかかっていることになります。
例えば有人潜水艦の代表「しんかい6500」が潜航できる水深の6500mでは、1cm3(親指の爪くらいの広さ)に約670㎏(軽自動車くらい)の海水の重さがかかることになります。
水族館で深海の生物を展示しているのを見ますが、ほとんどの水槽は特別に水圧をかけるということはおこなっていません。
海水温の変化
海水温は地域や季節によって大きく異なりますが、表面から深海に向かって低下します。海面付近には、深さ方向に水温変化の少ない表層混合層といわれる層があります。
夏季には、海面付近の海水が温められ下層の海水温との差が大きくなるため表層混合層は薄くなります。
一方,冬季には、海上を吹く風や波、海面での冷却によって上層と下層の水がさかんにかき混ぜられるため表層混合層は厚くなります。
表層混合層より下層(外洋域ではだいたい水深200~300m)では、深さとともに海水温が急に低下する層が水深1000m付近まで存在します。この層は水温躍層と言われます。
水温や塩分の変化は海水の密度に関係します。密度とは一般に海水温が低く塩分が多いほど密度は高くなります。密度が低い表層海水(暖かく軽い海水)と密度が高い深層海水(冷たく重い海水)に挟まれたこの層は,海水密度の変化も激しいことから密度躍層ともよばれます。
そして,この層における海水温の変化は表層と下層の物質の循環や分布に影響を与えます。水温躍層を過ぎると、海水温は緩やかに低下し、ほとんどの外洋域の海底の平均水温は2~4℃と非常に冷たくなります。
深海には地球内部で暖められた熱水が吹き出す穴(熱水噴出孔)があります。熱水には,地上より遥かに大きな圧力がかかり,さらに,塩分や金属成分がたくさん溶けています。そのため,熱水の温度は200~400℃になります。
深海の水槽は冷たい
水族館の深海水槽は水槽にはチラーと呼ばれる特殊なクーラーが装備されており、真夏の暑い時期でも常に低い水温を維持できます。
光や水温などの環境条件を深海の環境に近づけて飼育をすることが、デリケートな深海生物を長く展示(飼育)し続ける最大のポイントであり、難しいところでもあります。
少し難しいお話となってしまいました。
今回は“とと”ではありませんでしたが、未知なる領域の深海とはどのようなところなのか少しわかっていただけたでしょうか?
このお話を踏まえて深海魚のすばらしさをもっと知っていただけると幸いです。
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