日本とポルトガルの食はよく似ています。個人的にも、海外旅行中に日本食が恋しくならず、また胃腸の疲れも感じづらかったのはポルトガルが初めてでした。
ポルトガル人が初めて日本に上陸したのは、1543年のことです。種子島に漂着したポルトガル人によって鉄砲が伝来し、これが「鉄砲伝来」と呼ばれています。その後、ポルトガルは長崎に貿易拠点を開設し、南蛮貿易と呼ばれる活発な貿易が行われました。
ポルトガルと日本は、16世紀から約470年間にわたる交流の歴史があります。この交流は、日本の歴史、文化、社会に大きな影響を与えました。南蛮貿易を通じて、日本にはキリスト教や建築物、衣服、音楽、医学、食べ物など…… 様々な新しい文化が伝わりました。日本で、パンをブレッドと呼ばないのも、ポルトガル語由来によるものだからです。
17世紀に入ると、江戸幕府はキリスト教の弾圧を強化し、鎖国政策を実施しました。これにより、ポルトガルとの交流は途絶えました。明治維新以降、日本は再び欧米諸国と交流を深め、ポルトガルとも関係が回復しました。現在では、両国は政治、経済、文化など様々な分野で交流を続けています。
〝ポルトガル語〟の日本食
前述の通り、日本のパンはポルトガル語のpaoが由来となっています。このほかにも、ポルトガル語の日本食は数多いです。
1.カステラ
ポルトガル語で「pão de ló」と呼ばれる焼菓子が起源とされています。天正年間(1573~1592年)に長崎に伝わったと考えられ、その後、日本風にアレンジされて現在のカステラとなりました。
2.金平糖
ポルトガル語で「confeito」と呼ばれる砂糖菓子が起源とされています。16世紀頃に長崎に伝来し、その後、日本人の手で独特の形に変化しました。
3.ボーロ
ポルトガル語で「bolo」と呼ばれる丸い焼菓子が起源とされています。16世紀頃に長崎に伝来し、現在では丸ボーロや平らなボーロなど、様々な種類があります。
4.天ぷら
ポルトガル語で「tempora」と呼ばれる揚げ物料理が起源とされています。16世紀頃に長崎に伝来し、その後、日本風にアレンジされて現在の天ぷらとなりました。
5.ビスケット
ポルトガル語で「biscoito」と呼ばれる乾パンが起源とされています。16世紀頃に長崎に伝来し、その後、日本風にアレンジされて現在のビスケットとなりました。
このほかにもキャラメル(caramelo)、ジャム(doce de fruta)、マシュマロ(marshmallow)などがあります。これらの食べ物はいずれも、日本人に親しまれ、長く愛され続けています。このように、ポルトガルは日本の食文化に大きな影響を与えてきた国と言えるでしょう。
日本とそっくり!? ポルトガルの〝とと(魚/整)のいめし〟
ポルトガルは古くから海に面した国であり、漁業が盛んです。そのため、食文化においても魚介類が重要な役割を果たしており、一人当たりの魚介類消費量は世界トップクラス。日本は24位、ポルトガルは12位と、ポルトガルの方が日本よりも順位が高く、魚介類の消費量が多いことがわかります。ポルトガルと日本は、海に面した国という共通点があり、古くから交流があったため、食文化にも共通点が見られます。かつて日本は世界トップクラスの魚介類消費量を誇っていましたが、近年は減少傾向にあります。一方、ポルトガルは近年も安定して高い消費量を維持しており、世界でも有数の魚食国と言えます。
ポルトガルで、特に人気のある魚介類を3つ紹介します。いずれも、日本でもなじみ深い魚介類です。
1.バカリャウ(タラ)
ポルトガルでは国民食ともいえるバカリャウ。いわゆる塩漬けして、干したタラです。
日本各地でも古くから干しダラを保存食としてきたため、日本人にはなじみ深い味だと思います。
用途:マリネ、コロッケ、オムレツ、グラタン、煮込み、グリルなど
栄養:高タンパク質で低脂質なタラは、ダイエットの強い味方です。
2.イワシ
ポルトガルの夏の風物詩といえば、なんといってもイワシ。
サティシュ・ド・サルダーニとは、ポルトガル最大のイワシ祭のひとつで、毎年6月に開催されます。炭火で焼いたイワシを食べる習慣が広く定着していますが、ヨーロッパらしいニンニクやハーブなどを使う料理ではなく、写真の通り、いわゆる日本の焼魚です。
用途:マリネ、マリネ、炭火焼き、缶詰、フライなど
栄養:体内で合成できないオメガ3系脂肪酸は、良質なタンパク質とともに細胞の修復をサポートします。
3.タコ
タコはヨーロッパの多くではあまり見かけませんが、スペインやイタリア、ポルトガルでは、日本同様によく食べられます。ポルトガルのタコ料理の特徴は、なんといってもやわらかいことです。
タコのマリネは前菜の定番メニュー! 私もポルトガル滞在中には、数えられないほどいただきました。炊き込みご飯や雑炊、天ぷら、グリルもぜひ食べていただきたい1品です。
用途:グリル、マリネ、天ぷら、煮込み、炊き込みご飯、リゾットなど
栄養:大注目のタウリンには、疲労回復や肝機能のサポート、血圧の安定などの効果が期待されます。
いずれも、私たち日本人がなじみ深い魚介類であることがわかります。
さらに、ポルトガルの主食としてより重要視されるのはパンですが、米も食卓にあがります。
そして忘れてはならないのが、ポルトガルのスープです。飲むとホッとするような素朴な野菜のスープは、日本の味噌汁とよく似ています。
魚をよく食べたいた時代の〝日本食〟とよく似ているポルトガル料理。
上手に取り入れることができれば、私たちの整いめしになってくれると思います。
プロフィール
GLOCAL EATs
ソーシャルデザイナー 石松 佑梨(いしまつ ゆり)
サッカー日本代表選手をはじめ、世界で活躍するトップアスリートの専属管理栄養士として食トレを提供する。次代を担うジュニアアスリートの食育にも力を入れる。近年では雑誌や商品、レストランなどの栄養監修に携わる一方で、絵本作家としての活動に注力している。
著書:過去最強のコンディションが続く 最強のパーソナルカレー(かんき出版)
インスタグラム:personal_curry
ホームページ:https://glocaleats.recipee.net
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